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第99話

彼は私が再び警察に通報することを恐れて、会社にも行かず、書斎でビデオ会議を開いた。

私は彼に見張られて居ても立ってもいられず、庭に座って一日中ぼんやりと過ごした。

……

翌日、お爺さんの葬儀が行われた。雰囲気は重苦しく寂しいものだった。

霧雨が降り続いて、心にも沁みる寒さだった。

それで私も江川家の邸宅を出ることができた。江川宏のそばについて彼に連れられて、まるで操り人形のように葬儀の客人をもてなした。

この二日間、彼の機嫌は非常に悪く、変わったというよりも本性を現したと言えた。

私はまったく抵抗することができなかった。

昨夜も彼に言ったが、お爺さんは最期に私たちが離婚しないように頼んだわけではなかった。ただ江川アナが江川家に嫁ぐことを許さなかっただけだ。

彼は信じない。

私が彼を騙していると言うのだ。

そして、私も疲れていて、彼と言い争いをする気力などなかった。

葬儀が始まると、私は黒いウールコートを着て、静かに横に立っていた。お爺さんの生涯を人々が語るのを聞いていた。

80年間の歳月が、最後はこのようにあっさり終わってしまった。

二日前まで私に笑いかけていた人が、今はただの土になってしまった。

「お爺さん!」

江川アナが突然現れ、泣きながら墓石の前に跪いて言った。「お爺さん……なぜこんなに突然去ってしまったのですか」

江川宏が動き出さないうちに、私は頭を振って合図して言った。「土屋じいさん、彼女を連れて行って」

お爺さんが一番見たくない人は、彼女だ。

江川アナはそれを聞き、立ち上がって私を問い詰めた。「あなたに私を追い出す資格はないでしょ」

「あなたが決めてください」

私はこれを江川宏に任せ、河崎来依たちの方に向かって歩いていった。

それを聞き、江川アナはすぐに怒りを収め、江川宏の腕を抱きしめた。「宏、私は今日退院してすぐ駆けつけたのよ。寒くて死にそう!」

「お腹はもう痛くないのか?」

江川宏は冷たくそれを振り払った。表情は無表情のまま変わらず、深い池のように静かで寒さを感じさせた。

「ううん、もう痛くないよ……」

江川アナの顔が一瞬引き攣り、すぐに悪態をついた。「私はお爺さんの葬式に参加するためにわざわざ来たのに、前妻の分際でどいうことよ。話しかけてきたと思ったらすぐに私を追い出すなんて」

江川宏の声は冷た
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