第11話

小舟茂は驚愕した。これまでの年月の中で、初めて父さんが再婚の話を自ら持ち出してきたのだ。

父さんは小舟茂に、自分と小舟茂の生母との間はもともと商業的な結婚であり、感情はなかったと告げた。

当初、彼女が海外旅行中に真実の愛を見つけ、離婚を提案した時、父さんは同意した。

しかし、当時10歳だった小舟茂のために、二人はその後も見せかけの関係を続けた。

ただ、父さんはとある日、私の母に出会った。

この名ばかりの婚姻は、ようやく幕を下ろした。

父さんの言葉を聞いた後、小舟茂は目が赤くなり、歯を食いしばり、父さんの表情から嘘の兆しを探そうとした。

残念ながら、彼は失敗したようだ。

生まれて初めての父との長い話し合いが、彼に大きな衝撃を与えた。

「つまり、宇佐美母さんに会ったとき、父さんと母さんはすでに離婚していたということ？」

父さんは気まずそうに頷いた、「君がまだ小さいと思って、言えなかった。今、君の宇佐美母さんと世界一周旅行に行く予定で、ついでに留学している詩織にも会いに行くんだ」

「はい......」

小舟茂はぼんやりと頷き、喉が上下に動き、感情を抑えている様子だった。

「ではお二人で、楽しんでください。俺は用事があるから、先に行く」

そう言ってから、彼はもう感情を抑えきれず、車の鍵を手に持って別荘の外へ走り出た。

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私は彼が猛スピードで車を走らせ、信号を無視して進んでいくのを見ていた。

最後に、彼は志摩彩実の家の前で止まった。

ドアを開けると、厚いコートを着た志摩彩実が寝不足の様子で現れた。

しかし、小舟茂だと気づくと、彼女は本能的にドアを閉めようとした。

ドンという音が響き、木製の扉と肉体がぶつかる音がした。

「何しに来たの？」

志摩彩実は嫌悪感をあらわにし、「また自分の女を捨てたわけ？」と言った。

「詩織はどこにいる？彼女は隠れているのか？」

小舟茂は「詩織は死んだのか？」という言葉を結局口にできなかった。

だが、志摩彩実は理解していた。

彼女は小舟茂の外見と内面の違いに気づいたようで、口元をゆるめて軽く笑い、その声には軽蔑が満ちていた。

「小舟茂、お前は自分の心の中に答えを持っているんじゃない？」

「お前は嘘をついているだろう」

小舟茂の唇は震え、彼は志摩彩実の目をじっと見つめ、悔しさに満ちていた。