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富家の若旦那の愛、私には遠すぎる
富家の若旦那の愛、私には遠すぎる
著者: 山田千恵

第1話

藤原りさに誘われて、豪華なクルーズ船に乗り込んだ。

初めての仕事で、ここで中村直樹という人物にも初対面した。

「この男たち、みんなお金持ちの二世や三世で、海釣りが趣味なんだって。隣にいる女の子たちは遊び相手ばかりで、本命の彼女じゃないからね」

私はうなずきつつも、ビキニ姿に少し居心地の悪さを感じていた。

ショールを羽織ってはいるけれど、今までウェディングドレスのモデルくらいしか経験がなく、こんな露出の多い格好は初めてだった。

みんなシャンパン片手に音楽を楽しみ、船は沖へどんどん進んでいった。

「これって、公海に出てるんじゃない?」

私は少し不安になって聞くと、「そう、公海よ。あとでゲームが始まるから、無理しないでね!」

と答えられた。

目的地に着くと、誰かが釣り道具を取り出し、スタッフ二人がキラキラの衣装を運んできた。

「最初は人魚ゲーム。参加は自由、最初に釣り上げられた人には賞金百万円!」

百万円と聞いた瞬間、私は目を輝かせて思わず手を挙げた。

「私、やります!」

りさは私を恨めしそうに一瞥した。

「このお金は簡単には稼げないよ。ベッドに寝ているよりもずっと難しい」

「死ぬことはないよね?」

「普通は死なないけど……」

「死ななければ大丈夫だね」

私はスタッフの指示に従い、特別な尾鰭の衣装を着た。それを着ると、ほんとうの人魚のようになった。

現場には5人の女の子が自ら参加していて、りさは私たちと争うのが面倒で、昔の知り合いと酒を飲んでいた。

私たちは次々に海に飛び込んだ。

数人の富豪の若者たちが釣り竿を下ろしていた。

釣り針には餌がなく、ただ光る鋭いトゲだけがついていた。

ある女の子が近くの釣り針に素早く泳ぎ寄り、手を伸ばそうとした。

しかし隣にいた女の子が彼女を引き止め、水中で強引に引きずり下ろした。

「最初に釣られようなんて、無理だよ!」

富豪たちは水中での彼女たちの争いを興味津々で見て、みんな笑い転げていた。

私は気づいた。私たちは魚で、彼らは私たちを釣ろうとしている。

その釣り針は、自分で引っ掛かりに行くものだった。

魚尾のドレスを触ってみたが、釣り針を引っ掛ける部分はなかった。

別の女の子が一つの釣り針に近づき、左手で釣り針を握った。すると、そのトゲが手のひらに刺さり、血が流れた。

「なるほど!」

このゲームは思っていた以上に血なまぐさい。

「こうた、これがお前の釣り竿だ」

「ハハ、これで僕の勝ちが決まりそうだな」

松田こうたは釣り竿を引き始めた。すると、女の子が少しずつ引き上げられ、手が釣り針にかかり、苦痛に満ちた表情を浮かべた。

隣の女の子が素早く泳ぎ寄り、釣り針に引っかかっている女の子の魚の尾を掴んで、力いっぱい引き下ろした。

「痛い!」

釣り針にかかっていた女の子は悲鳴を上げ、手のひらが鋭い釣り針に引っかかり、指と一緒に裂けてしまった。彼女はそのまま海に落ちてしまった。

海面には血が浮かび上がり、すぐに広がっていった。

周りの富豪たちは大笑いしていた。

「この魚たち、なかなか手強いな」

こうたは釣り竿を再び下ろし続けた。

5人の女の子の中で、私だけが静かにその様子を見守り、彼女たちが水中で争うのを見ていた。

これが裕福な人たちの遊びなのか?

人の命をぞんざいに扱うなんて。

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