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第12話

檻の中の動物を目にした瞬間、胸が凍りつくようだった。

それは狼犬だった。

しかも媚薬を与えられ、発情期でいらつきながら低く唸っていた。

その姿は実家で見かけた発情中の野犬に似ている。

スタッフが檻の扉を開けると、狼犬は勢いよくこちらに飛びかかってきた。

私はすぐさま鉄柵をよじ登った。幸いにもその柵は高さが5メートルもあり横にはつかまるバーもあった。

他の檻を見渡すと、ほとんどの女性が狼犬に押さえつけられ、泣き叫んでいた。

布が裂ける音が次々と響いた。

ある女性は肩を狼犬の前足で押さえられ、体に深い傷を負っていた。そんな光景がリアルタイムで「鑑賞」されているのだ。

彼女は苦痛の悲鳴を上げたが、周りの富豪たちはただ笑い転げていた。

この人でなしども、私たちを人間扱いしていない!

他の人に気を配る余裕はない。檻の中の狼犬がこちらに迫り、もうすぐ私を噛みつきそうだった。

私はもともと髪をまとめていたが、銀の簪を抜いて髪を下ろした。

田舎で豚を屠殺したことがあるから、豚と犬はほとんど同じだと思う。

動物の腹は意外に柔らかい。

私はスポーツジャケットを脱ぎ、下着だけになった。

狼犬が飛びかかる瞬間、服でその頭を覆い、視界を奪った。

その後、一撃で鼻を強く叩き、狼犬が混乱している隙に簪を素早くその腹に突き刺した。

動作は迅速で、全力を尽くした。

狼犬は痛みにうめき声を上げ、私は簪を引き抜くと、腹から鮮血が噴き出した。

狼犬は服を振り払って私の腕を噛み、檻から引きずり降ろした。

その場の視線はすっかり私に引き寄せられていた。

人と犬の壮絶な戦いが繰り広げられている!

痛みをこらえながら落ちた簪を拾い、狼犬の腹に攻撃を続けた。そのまま腹を裂くと、腸が流れ出た。

私が勝ち、狼犬は死んだ。

風に髪が舞い上がり、私はまるで魔女のようだった。

体は血まみれで、腕には犬に噛まれた傷があり、少し骨が見えていた。

観客席は静まり返っていたが、やがて拍手が沸き起こった。

私は直樹を見つめ、その目に強い決意を込めた。

もし目で殺せるなら、彼はもう死んでいるだろう。

このゲームではせいぜい怪我をするだけで、死ぬ人はいないと思っていた。

だが、私は直樹の人間性を過大評価していた。

直樹は冷たい笑みを浮かべ、私に親指を立てた。

ゲームは終わっ
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