Share

第5話

一昨日、私と母は治療費のことで悩んでいた。

「手術費用は三百万円必要です。よく考えてください。手術をしないのであれば、明日退院することになります」

病院から、私と母に最後通告が出された。

「手術をお願いします。予約を入れてください」

私は母を安心させようとした。

「翔太と相談するから、お金を借りてくるよ。心配しないで」

母は心配そうな顔をしていた。諦めることも考えた様子だけど、彼女はまだ45歳で、これからの人生が長い。私は絶対に彼女を見捨てることはできない。

「翔太、母ががんで手術が必要なの。三百万円貸してもらえない?必ず返すから、借用書も書くよ」

翔太は私の彼氏で、普通のサラリーマンだ。

「三百万円も貯金なんてないよ。2万円なら出せるけど、それ以上は無理だ」

「車を買おうとしてたんじゃなかったの?お金はもうないの?」

「うん、車はローンで買うから、そんなに貯金はないんだ」

私は翔太との電話を切り、考えた結果、あの方法しかないと決めた。

先月、親友のりさが私に「コールレディをしてみたら?」と勧めてきたけれど、稼ぎ方がどうにも後ろめたく感じて、断った。それでもお金を急いで工面しないといけなくて、ほかに道がなかった。

「りさ、お金を貸してくれない?」

りさは私の苦しい状況を理解して、すぐにOKしてくれた。

「だから前から一緒にやろうって言ってたのに。たった三百万円でそんなに悩むなんて。口座番号を教えてよ。明後日、世間を見せてあげる」

私は振り込まれた三百万円を確認して、少しだけほっとした。

これで母は助かる。

三百万円を稼いでりさに返したら、もうこの仕事はやめるつもりだ。

私はそう心に決めたけど、翔太には少し後ろめたさを感じていた。

もし彼がこのことを知ったらどう思うだろう?

でも、もう選択肢がなかった。短期間で三百万円を手に入れるには、違法か、倫理に反することしかできない。

追い詰められた私は、倫理に背く道を選んだ。

翌日、母は無事に手術を終え経過も順調だった。

母の世話をしてもらうために介護士を雇った。

私もお金を稼ぎに行かないといけなかった。

Related chapters

Latest chapter

DMCA.com Protection Status