婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?

婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?

last updateLast Updated : 2025-04-14
By:  愛月花音Updated just now
Language: Japanese
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 エルザは、アルセント帝国のサファード公爵家の一人娘。この一族は時の神の 加護を受けており、時を止める能力を持っていた。そして皇太子レイヴァンの婚約者。 しかし異世界から聖女レイナが現れ自分をイジメる悪女に仕立て上げられてしまう。レイヴァンは、アカデミーでは冷たくするも、身体の関係を続けていた。 しかし、邸宅では気遣う優しさも見せるため、矛盾な態度に悩まされる。 そんな中で妊娠してしまう。だが、レイヴァンはアカデミーの卒業パーティーでレイナをパートナーにし、聖女殺人未遂の濡れ衣の罪で婚約破棄を告げられてしまい!? 窮地に追いやられるエルザ。 そんな時に彼女は不思議な夢を見る。そして、それに渦巻く真実とは?

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第1章・悪役令嬢。

 アルセント帝国は、魔法国の中でも大きく騎士や魔導師の育成や商人の買付けなどが盛んなところだ。自然も豊かだと言われている。 アルセント皇族は、もっとも膨大なマナを持っており、権力と実力はトップクラス。それに続くのが貴族なのだが、この国の守護神であり、我がサファード公爵家は別格だった。サファード一族は、時の神・クロノスの加護を受けている。 その力は、時を止めるほど強力。代々サファード一族の血を引く女性が受け継がれてきた。 そのため皇族としても、その力を欲しがり血を受け継いだ女性との婚姻を申し込んできた。しかしサファード一族は、その力を手にした皇族の影響力を恐れ断り続けてきた。 皇族も公爵家であり、別格の能力と権力を持っているため強引に出れない。 しかし、何年かぶりにサファード一族に女の子が産まれたことで話し合われ、両者とも納得の上で婚約が決まった。 その女の子であり、サファード公爵家の一人娘が私、エルザ・サファード。 婚約者であり、次期皇帝陛下と噂される皇太子・レイヴァン・アルセントとの出会いだった。 エルザがレイヴァンにお会いしたのは5歳の頃。父親に皇宮に連れて来られた時。初めて見るレイヴァンは、とても美しい少年だった。 皇族しか現れないという美しい白銀の髪。グレーの瞳。透き通るような白い肌。 まるで天使が舞い降りてきたのかと思うほどに輝いて見えた。 その姿を目にした時、何故か気持ちが高ぶり、どうしようもなく涙が溢れてきたのは、今でもエルザはハッキリと覚えている。 しかし、その天使みたいな美少年に出会うことで、自分の人生が大きく左右されるなんて、この時は夢にも思わなかった……。 エルザ達は、あれから数十年の月日が過ぎ『魔導育成アカデミー』の高等科に進学する。このアカデミーは魔法、剣術、教養などが学べる。 婚約者として恥じないように日々教養と技術、そして社交界としてのマナーを頑張って学んできたはずだった。しかし、ある聖女が編入してからその関係は変わってしまった。いや……レイヴァンの気持ちが分からなくなった。 皇族としてエルザとの婚約を進めてきたレイヴァンだったが、最近アカデミーで生活をする時は、聖女のレイナと一緒に居ることが増えていた。 レイナはある時、突然姿を現した転生者。人を癒したり、治癒ができる特別な能力を持っているため聖皇庁が...

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第1章・悪役令嬢。
 アルセント帝国は、魔法国の中でも大きく騎士や魔導師の育成や商人の買付けなどが盛んなところだ。自然も豊かだと言われている。 アルセント皇族は、もっとも膨大なマナを持っており、権力と実力はトップクラス。それに続くのが貴族なのだが、この国の守護神であり、我がサファード公爵家は別格だった。サファード一族は、時の神・クロノスの加護を受けている。 その力は、時を止めるほど強力。代々サファード一族の血を引く女性が受け継がれてきた。 そのため皇族としても、その力を欲しがり血を受け継いだ女性との婚姻を申し込んできた。しかしサファード一族は、その力を手にした皇族の影響力を恐れ断り続けてきた。 皇族も公爵家であり、別格の能力と権力を持っているため強引に出れない。 しかし、何年かぶりにサファード一族に女の子が産まれたことで話し合われ、両者とも納得の上で婚約が決まった。 その女の子であり、サファード公爵家の一人娘が私、エルザ・サファード。 婚約者であり、次期皇帝陛下と噂される皇太子・レイヴァン・アルセントとの出会いだった。 エルザがレイヴァンにお会いしたのは5歳の頃。父親に皇宮に連れて来られた時。初めて見るレイヴァンは、とても美しい少年だった。 皇族しか現れないという美しい白銀の髪。グレーの瞳。透き通るような白い肌。 まるで天使が舞い降りてきたのかと思うほどに輝いて見えた。 その姿を目にした時、何故か気持ちが高ぶり、どうしようもなく涙が溢れてきたのは、今でもエルザはハッキリと覚えている。 しかし、その天使みたいな美少年に出会うことで、自分の人生が大きく左右されるなんて、この時は夢にも思わなかった……。 エルザ達は、あれから数十年の月日が過ぎ『魔導育成アカデミー』の高等科に進学する。このアカデミーは魔法、剣術、教養などが学べる。 婚約者として恥じないように日々教養と技術、そして社交界としてのマナーを頑張って学んできたはずだった。しかし、ある聖女が編入してからその関係は変わってしまった。いや……レイヴァンの気持ちが分からなくなった。 皇族としてエルザとの婚約を進めてきたレイヴァンだったが、最近アカデミーで生活をする時は、聖女のレイナと一緒に居ることが増えていた。 レイナはある時、突然姿を現した転生者。人を癒したり、治癒ができる特別な能力を持っているため聖皇庁が
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第2話。
(突き落とす……? 何のことだろう?) 何故、エルザが彼女を階段から突き落とさないとならないのだろうか?「それは……どういう意味ですか?」 エルザは、意味が分からずに、聞き返そうとしたらレイナが覆い被さるようにレイヴァンに後ろから抱きついてきた。しかも泣きながら。「おやめください、レイヴァン様。私が悪いのです。婚約者が居ると分かっているのに、レイヴァン様と親しげにしているから、きっと嫉妬してあんなことを。咄嗟に手すりに掴まったから怪我もありませんでしたし」「しかし、もし手すりに掴まっていなかったら」 レイヴァンの言葉に涙をこぼすレイナ。「その時は……死んでいたかもしれませんわね」 その言葉にカッとしたレイヴァンは、座り込んでいるエルザの胸ぐらを思いっきり掴んで引き寄せる。そしてエルザを突き飛ばした。「いいか。今度同じマネをしてみろ。ただじゃ済ませないからな」 レイヴァンは、そう冷たく言い放つと、そのまま立ち去ってしまった。 周りの生徒達はその光景を見て、ヒソヒソと内緒話をしたり、クスクスと見下すように笑っていた。「今の見ました? サファード公爵家の令嬢も落ちたものよね」「聖女様を階段から突き落とすなんて、恐ろしい。さすが悪役令嬢」「なんて罰当たりな。聖女様に対して」 第三者から見たらエルザは、レイナに嫉妬して嫌がらせをした悪役令嬢。 そう周りから言われていた。しかしエルザは、叩かれた頬を触りながら、ただボー然としていた。 叩かれたとか、酷い言葉を投げかけられたからショックを受けたからではない。 胸ぐらを掴まれた時、レイヴァンはエルザにしか聞こえないほどの小さな声で「いつもの場所で待て」と言ってきたのだ。「いつもの場所」その言葉を聞いた時、エルザはピクリと身体を反応させる。 その言葉の意味を知っているからだ。 エルザは、急いで立つと、そのまま皆の前から立ち去る。向かった先は、使われていない研究室。ある場所とは、このことである。 これから行われることに不安や緊張しているエルザ。 ガラッとドアが開き、レイヴァンが入ってきた。「レイヴァン様……」 エルザは、殿下の名前を呼ぼうとした。しかしレイヴァンは、エルザを見た瞬間にバンッと壁に手をついて逃げられないように壁に追いやる。そして睨むようにエルザを見下ろしてきた。「エルザ
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第3話。
「だ、ダメです……あ、あん……まだ授業が……んあっ」 何とか抜いてもらおうとするが、レイヴァンはやめない。むしろさらに激しく動かしてきたのだ。そのたびに水音がして愛液が下着を濡らした。 頭が真っ白になり、涙が溢れてきた。するとエルザの体が輝き出した。「そんなに感じていたらおしおきにならないだろう。それよりもエルザ。そろそろマナを使って時間を止めろ」「……んんっ……あぁ」 その瞬間だった。周りの壁やテーブルなどが石のように変わり固くなる。 エルザは、レイヴァンの指示に従い世界の時間を止めた。これこそサファード一族の本来の力。 レイヴァンは、エルザをお姫様抱っこしてくると、長方形のテーブルに座らせる。「やはり……いつ見ても、その瞳は不思議で綺麗だ」「……レイヴァン様」 サファード一族の女性は、その能力を受け継ぐ証拠に瞳の色が変わる。普段は、碧眼だが興奮したり、悲しい事など感情が高ぶると瞳が七色の宝石のようにキラキラと光るようになっている。それが合図だ。しかしその能力は、世界を揺るがすほど大きい。そのため能力を知っているのは、皇族の一部だけ。貴族達は、ただの権力の高い皇族のお気に入りだと思われている。 レイヴァンもエルザの能力を知る1人。だからか、エルザを傍に置きたがる。 そのまま唇にキスをしてくる。軽い触れるように塞がれたと思ったら、何度も深く舌を絡ませ下着をはぎ取ってきた。そしてエルザを寝かせると膣内の部分を熱い舌でねじ込んでくる。その刺激に背中をそり上げながら反応してしまう。「うあっ……やぁっ……ダメです。あっ……レイヴァンさまぁ」 レイヴァンの頭を抑えながら必死に訴えた。 汚いし……おかしくなっちゃう。「静かにしろ。外まで聞こえるだろう」「だっ……だって……んあっ……やっ……」 本来なら時間を止めているので聞かれても問題がないはず。だが、レイヴァンの舌の感触が気持ちよくて、そこまで頭が回らない。舌で舐められるたびに愛液が少しずつ溢れてくる。何も考えられなくさせられる。するとレイヴァンは、舐めるのをやめる。「そうだったな。これはおしおき。なら、1番苦しむ方法でやらないとな」 その瞬間だった。エルザの口の中に、さっきまで穿いていた下着を押し込めてきた。「んんっ……」 苦しい。しかしレイヴァンは取ってくれるどころか
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第4話。
 レイヴァンことは、気にすることなく、素早く着崩れした制服とズボンを直した。「私は、もう行く。次の授業までには来い」 それだけ言うと、そのまま研究室から出て行ってしまった。 エルザも何とか起き上がるが、乱れた制服と髪型。汗もかいており、あそこも垂れたままだ。「急がないと……」 エルザは、テーブルから起き上がると崩れた制服を直し、ハンカチで拭いた。そして、そのままお手洗いに向かうと後処理をする。 しかし肝心な下着がダメになってしまった。汚れてベタベタ。 この時のために予備の下着を用意しているのだが、今日の日に限って忘れてしまった。仕方ない……恥ずかしいが穿かないでおこう。 エルザは下着を穿かずに、次の授業に出ることにした。教室である講義室に入るとクラスメイト達の視線がエルザに集中する。 それもそのはずだ。さっきまでエルザは、皇太子であるレイヴァンに公衆の前で叩かれたばかり。時間も止めていたから、そう経っていないが。 叩かれた頬は少し赤く腫れ、泣いた痕まである。どう見ても泣いていて遅れていたに過ぎない状況だろう。だから周りも冷ややかな目でエルザを見てきた。「泣いて遅れてきたのね」「まぁ、可哀想に。でも、よく授業に出て来られたわよね? 私なら恥ずかしくて早退しますわ」「それだけ神経が図太いのではなくて? 悪役令嬢様ですもの」 クスクスと陰で笑われる始末。 しかしエルザは、そんなことは気にしてなかった。それよりもスースーする下半身が気になって仕方がない。 転んで見られたら丸見えだ。それこそ変な噂が流れかねない。 急いで空いてる席に座る。目を見ると四つ目の離れた席がレイヴァンだった。もちろん横にはレイナが当たり前のように座ってベタベタしていた。 するとレイヴァンはこちらを見てくる。するとクスッと笑っていた。きっと今の状況を見て満足しているのだろう。 授業は普通通りに始まるが、まだコソコソお噂を言っている人達が居る。しかしエルザは教師の声も噂を言っている声も耳には入らなかった。 それどころではない。スースーする下半身に、少しでも動かせば感触を思い出す。まだレイヴァンのモノが入っているような感覚。数分前までの出来事だったので、記憶が鮮明に残っているからだろう。 お尻を少しでも動かしただけで、ピクッと反応して愛液が溢れてきてしまう
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第5話。
 エルザは入浴が済むと自分の部屋に向かう。 夕食まで時間がある。少し眠ろうとしてベッドに横になった。 柔らかいベッドに寝そべりながら考え込む。この生活はいつまで続くのだろうと。 エルザは、レイヴァンの婚約者として、これからも頑張りたい。しかし、この環境はいつ覆されるか分からない状態だ。 聖女であるレイナが居るから? それもあるだろうけど、エルザに対しての嫌がらせだろうと思っていた。 彼は、エルザが嫌がる顔や泣く姿を見るのが好きだった。泣くのを好むのは理解ができる。サファード一族の能力のせいだろう。泣くことで瞳の色が変わるから。 ただ1つ気がかりなのは、その力を受け継ぐもの。 レイヴァンがエルザに対する目的は、孕ませることではないだろうか? エルザが妊娠して女の子を授かったら、その能力はその子が受け継ぐ。しかしマナが子供に受け渡ると母親の持っている能力は失われる。 サファード一族の能力に皇族の膨大なマナを受け継いだら、どの国も一溜まりもないだろう。それこそ神に近い存在になれるかもしれない。 『時を止める能力』を我が子に受け継がせればサファード一族なんて、どうにでもなる。そう考えているのなら……。 エルザは、考えるほど涙が溢れてきた。彼が欲しいのは自分ではない。 しばらく泣き続けていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。窓の外を見ると暗くなっていた。今、何時だろうか? するとドアがノックされる。返事をするとビビアンが入ってきた。「あ、丁度お目覚めでしたか? 殿下が、ご帰宅されてエルザ様にお会いしたいと、食堂でお待ちです。早くご支度を」「えっ? レイヴァン様が」「それは大変だわ。早く着替えないと……」 エルザ侍女達に急いでドレスに着替えて、食堂に向かった。食堂に入るとレイヴァンは、優雅にお茶を飲んでいた。「遅れて申し訳ございません、レイヴァン様。ご挨拶を申し上げます」「いや、ゆっくりお茶を飲みたかったから構わない。寝ていたらしいな? 夕食を食べていないのなら今食べろ」「は、はい。心遣いありがとうございます。レイヴァン様はお食事の方は?」「もう、食べてきた。レイナが夕食は一緒に食べたいと駄々をこねるから。それに付き合ってきた」 めんどくさそうに、ため息を吐くレイヴァンを見て、エルザは不思議に思う。 彼女を愛しく思うのなら、
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第6話。
 しかし、レイヴァンは、それを嘲笑うようにエルザに話しかけてきた。「そういえば。今日、あの後……君は随分とはしたない格好で授業を受けていたな?」「ぐっ……ゲホゲホッ」 思わず飲んでいた飲み物を吹き出しそうになった。むせかえると、レイヴァンは可笑しそうに笑みをこぼしていた。もしかして気づいていたのだろうか?「まさか、一国の公爵令嬢が下着も穿かずに、授業を受けているなんて恥だな。しかも、それに刺激を受けて濡らしているなんて。君は、婚約者として本当に自覚はあるのか?」 レイヴァンの言葉に全身が火照り熱くなっていくのを感じた。恥ずかしい。 しかしエルザを試すように言葉を続けてくる。「何故下着を付けていなかったかはあえて聞かないが、あれぐらい我慢できなくて、どうするんだ? 私の婚約者が痴女だと知れ渡ったら、それこそ皇族の恥。君はどう責任を取る気なんだ?」「あの……本当に申し訳ございませんでした。どうかご慈悲を」 エルザは、立ち上がると頭を必死に下げた。するとレイヴァンは勝ち誇った顔で笑う。「顔を上げろ。エルザ……私は謝ってほしくて言っているわけではない。許してほしかったら、どうするか分かっているな?」「……はい」 それは、どういう意味をするのかはすぐに理解する。私の心臓の鼓動は速くなるのだった。 食事を済ませるとネイビー色で透けているベビードールに着替える。その上にバスローブを羽織りレイヴァンの寝室に向かった。 レイヴァンの寝室は、本殿である『ルビーキャッスル』の他にここにもある。 そこでエルザがすること。それはご奉仕だった。 エルザは、寝室に入るとバスローブを脱ぎ捨てる。下着の上にベビードールを羽織っている状態なので、乳頭が尖ってしまったところまで丸見えだ。恥ずかしい。 意識をしているのが気づかれてしまう。モジモジとしていると、レイヴァンはエルザの顔を見るなりニヤリと笑う。「乳頭をこんなに尖らして、意識をしているのが丸分かりだ。本当にやらしい女だな」「も、申し訳ありません」 やらしい女だと勘違いされてしまった。違うのに……。 しかし、レイヴァンは気にすることなく、エルザを抱き締めてきた。そして強引にエルザの唇を奪うように塞いでくる。未だに慣れないキスに戸惑う。 そんな私の唇をこじ開けるように舌を入れてきた。深く嚙みつくような激し
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第7話・レイナの思惑。
 翌朝。目を覚ますとレイヴァンの姿はなかった。エルザが眠って、すぐに本殿のお戻りになったのだろう。いつものことだ。 エルザとすることを済ませると、何もなかったかのようにすぐに戻られる。朝を一緒に迎えたことは、今までなかった。エルザは隣を見ながら、ため息を吐く。 彼の目的は、やはりエルザを孕ませるためだろう。しかし……。 自分のおでこを触る。眠りについた時に、おでこにキスをされた感触があった。 まだ微かに覚えている。そう思うのに気持ちはモヤモヤする。(あれは……夢?) レイヴァンが優しく、おやすみと言ってくれたような気がした。気のせいかもしれないけど確かに、そう感じた。すると誰かがノックをしてきた。 返事をすると入ってきたのはエルザ専属の侍女のビビアンとルルだった。「おはようございます、エルザ様。入浴の準備ができております」「そう。ありがとう」 エルザは少し照れながらもベッドから降りると、入浴をするためバスローブを羽織った。 そして入浴にした後は朝食を食べてからアカデミーに向かう。 馬車から降りると、広い敷地内に入っていく。校舎も立派で豪華な造りになっている。緑も多く、自然が豊かだ。1人で歩いて行くと、周り生徒達はこちらをチラチラと見て陰口を叩いていた。きっと昨日のことを、まだ言っているのだろう。いい気はしなかったが、言い返したところで自分が悪者扱いされるだけ。無視して校舎の中に入り廊下を歩いていると、レイヴァンとレイナが仲睦まし歩いている姿を見かけた。胸がズキッと痛む。もし、このまま捨てられたら? エルザの頭の中はそればかり考えてしまう。辛くなり、そのまま背を向けて別の階段から行こうとした、その時だった。ドンッと誰かとぶつかってしまう。勢いで尻餅をついてしまった。「す、すみません」 エルザは謝りながら上を見上げると、ぶつかった相手はセインだった。 セイン・アルセント。エルザとレイヴァンとは同い年で皇帝陛下の弟の嫡男。 大公爵家の次期跡継ぎであり小大公。レイヴァンとはイトコに当たる関係性だ。 皇族の血を引いているせいか。セインも白銀で背中まである髪を一つに結んでいる。 それにレイヴァンほどではないが、かなりの美形で長身。 騎士の腕も優れており、若くして皇族直系の尊属騎士団の団長でもある。そのため令嬢達の人気も高く有名
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第8話。
 彼もまた、レイナを崇拝している。今では護衛を買って出るぐらいだ。 どうしてレイナなのだろう。何故、将来の皇妃になる自分が我慢しないといけないのだろうか? 理不尽だ。 しかし、それを言い返す勇気も度胸もない。自分の立場に自信がなかった。 それから授業を受けるも、ずっと気持ちがモヤモヤしている。さっきのことや昨日の気怠さで集中ができない。すると講師のシッドラーがエルザに課題を振ってきた。「では、サファード令嬢。今言った魔法方式を解いてみて」「は、はい。えっと……すみません。聞いておりませんでした」「どうした? 次期皇妃なんだから、しっかりしてくれよ」「……すみません」 呆れたように眉間にシワを寄せるシッドラーを見て、エルザは落ち込みながら席に座った。 しゅんとするエルザの後ろで他の令嬢達がクスクスと笑う。恥ずかしい限りだ。 見るとレイヴァンがこちらを睨んでいた。ビクッと肩が震える。 授業で何も答えられなかったので怒っているのだろう。皇妃になるはずの婚約者が、授業でまともに答えられないのは、さすがに恥ずかしいのかもしれない。 泣きたくなる。しかし授業が続くにしろプレッシャーのせいか気持ち悪くなってきた。それに何だか熱っぽい気がする。 これ以上は失態をおかす前に保健室に行こう。次の授業が始まる前に席を立ち、講義室から出て行く。そして保健室に向かった。 保健室の中に入ると養護教諭のルーシーが丁度見えていた。「あら、サファード様。どうかなさいましたの?」「ちょっと熱っぽくて。気持ち悪いので少し休ませて下さい」「あらあら大変。どうぞベッドに横になって。熱も測りましょう」 ルーシーは、そう言うとベッドに案内してくれた。体温計で熱を測ってみると、本当に熱があったようだ。「まぁ、38度六分もあるじゃないの。どうしましよう」「ここで休んでいます。それでも酷いようなら迎えに来てもらいますわ」「そう? 私は、少し席を外すけど何かあったら言ってくださいね」「はい。ありがとうございます」 エルザは、お礼を言うと、そのままベッドに横になる。頭が痛い。 熱があると分かったせいか、余計に悪化したような気がする。身体も熱い。ぐったりとしたまま、しばらく寝ていると誰かが入ってきた。ルーシーが戻ってきたのだろうか? 目を開けるのも辛いので寝たふりをする。
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第9話。
 その後。やっと起きられるまでに回復すると、言われた通りに帰宅する。『ホワイトキャッスル』に帰宅するとトムソンとビビアン達が慌てて迎え入れてくれた。真っ青な表情で。「エルザ様。熱があるとお聞きしました。大丈夫ですか!?」「大丈夫よ。ちょっと熱があるだけだから」「お医者様もお呼びしました。すぐに治療してもらい、お休みになってくださいませ」「フフッ……大げさね。ありがとう」 エルザはクスクスと笑うと自分の部屋に向かう。しかし、本当は立つのもやっと。  心配かけないように気丈に振る舞った。  ビビアンとルルは、それに気づいたのかエルザを支えてくれる。 部屋に入るとネグリジェに着替えてベッドに横になった。高齢の医者がエルザを診てくれた。「疲労もですが風邪ですな。薬を飲んで休めばすぐに治るでしょう」「そうですか。ありがとうございます」 医者は、頭を下げると寝室から出て行った。エルザは、ため息を吐くと再び横になる。こんな時に風邪をひいて、体調を崩すなんて情けないと思った。 しかし、また熱が上がってしまう。ビビアンとルルに汗を拭いてくれたり、看病をしてくれた。すると眠っていると誰かの優しい手がエルザのおでこに触れてきた。 ビビアンだろうか?うっすらと目を開けると、レイヴァンだった。いつ帰宅したのだろうか?「目を覚ましたか?」「レイヴァン様。も、申し訳ございません」 エルザは慌てて起き上がろうとするが、熱でふらついてしまう。するとレイヴァンが咄嗟に支えてくれた。抱き締められと、心臓がドキッと高鳴った。「急に起き上がるな。病み上がりなのに」「申し訳ございません……」 エルザはドキドキしながらも謝罪する。そうしたらレイヴァンは、エルザを支えた状態で腰にクッションを敷いて座りやすくしてくれた。お陰で安定する。 すると近くにあった椅子に腰をかけるレイヴァン。「話は聞いている。熱を出したみたいだな?」「……はい。風邪をひいてしまったようです」 自分で言いながら、しゅんと落ち込んでしまう。呆れてしまっただろうか? 体には気を付けたつもりだったのに、心配をかけさせてしまうなんて。「それよりも食欲はあるのか? 料理長に言ってあたたかいスープを作ってもらったが、食べられそうか?」「は、はい。少しなら」「そうか。なら少しでも食べるといい。野菜
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第10話。
 翌朝。目を覚ますと体が軽くなっているのを感じた。熱が下がったようだ。 起き上がり、見るとレイヴァンは椅子に座ったままベッドに、もたれ状態で眠っていた。 もしかして、ずっと自分の看病してくれたのだろうか? そっとレイヴァンの手を触れようとする。そういえば昔もこんなことがあった。 幼い頃、エルザが風邪で熱を出した時も、こうやって看病をしてもらったことがある。 あの頃のレイヴァンは、今と違って表にも優しさを出してくれていた。今は、エルザや周りに冷たい印象が。エルザに何かあると、子供を産めなくなるからという理由かもしれないが、それでも彼の手のぬくもりは、こんなにも優しい。手に触れたせいか、レイヴァンは目を覚ました。しかし同時に、エルザの手を払いのけてきた。 エルザは払いのけられて、悲しい気持ちになったが挨拶をすることにする。「おはようございます」「……あぁ。それよりもどうだ? 具合の方は」「あ、はい。看病してもらった、お陰で良くなりましたわ」「……そうか」 レイヴァンはそう言うと席を立ち、背を向けてしまった。(あっ……行ってしまう) すると、そのまま止まり、こちらをチラッと見てくる。「しっかり良くなるまでアカデミーは休め。また悪くなっても迷惑だからな」「で、でも……授業が遅れてしますわ」「君の能力なら問題ないだろう。遅れるようなら家庭教師にでも教えてもらえ」「……はい」「治ったら芝居でも見に行こう」「えっ?」 慌ててレイヴァン様を見るが、そのまま行ってしまった。(芝居って言いましたよね? 今……聞き間違い?) 治ったら芝居に連れて行ってくれるっていうことだろうか? それが事実なら嬉しい。エルザは、その言葉にドキドキと心臓が高鳴って、嬉しさがこみ上げてくる。 レイヴァンとのお出かけなんて久しぶりだ。 エルザは、手を胸に当てる。何だろう……この気持ち。レイヴァンは冷たくて、何を考えているのか分からないのに。たまに見せる優しさに違和感があった。矛盾とも言うのだろうか? 自分には嫌がらせをしてくるのに。 それが原因なのかも知れない。エルザがレイヴァンと離れられない理由は……。 その後。エルザは言われた通りに、アカデミーを休んだ。 授業は確かに遅れる心配はあったが、レイヴァンがノートを写してくれたので、何とかなった。
last updateLast Updated : 2025-04-04
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