気が付くと見知らぬ場所に居た。 突然現れた観音様によると元の世界で俺は死んでしまったが、予定外のことらしく望めば別の世界で復活できるらしい。 突然のことで何が何やらだが、まだ死にたくはないし異世界で人生の続きを頑張ってみるか。 ・・・え?俺商人なのに金銭NGって冗談だろ?
ดูเพิ่มเติม街の広場を色々見て回っていると時刻も夕方に差し掛かる頃になっていた。 幾つかの取引もできて出店を満喫したところで今日は帰ることにした。 カサネさんも魔道具や本などをいくつか購入していたようだ。ミルドさんの家に戻るとエフェリスさんが今日も美味しい食事を用意してくれていた。どうやらお店も去年より盛況だったらしく一日でほぼ売り切れたため、明日は家族で学園祭を楽しむことにしたらしい。次の日、ミルドさん達と一緒に魔法学園まで向かいミルドさん達は先に出店を回るということでそこで分かれることになった。 俺達は予定通り、魔法練習場に向かうことにした。 塔まで歩いて行くと20人程の列ができている。塔を使えるのは一度に10人程度らしい。「細長い塔ですね。これでどうやって上まで行くんでしょう?」 「なんらかの魔法なんだろうけど、俺にはさっぱりだな」 「そういえば人数制限があるみたいですけど、ロシェさんはこのまま乗れるでしょうか?」・・・た、確かに。考えてなかった。どうしよう。『考えてなかったって顔ね。気にしなくていいわ。私は先に上っておくから』そういうと、ロシェの気配が俺から離れて山の上の方へと離れていくのが分かった。自力で登っていったらしい。流石だ。「もう山の上まで行ったみたいだ。早いなぁ」 「かなりの急勾配ですのに。流石ロシェさんですね」話しているうちに俺達の順番が回ってきた。 塔の中に入ると、何もない丸い空間で床には魔法陣のようなものが描かれていた。 塔の管理をしている人が「起動しますので動かないでください」と声を掛けて、壁際に合ったパネルのようなものに触れると、一瞬視界がぶれて次の瞬間には先ほど入ってきた入り口が無くなっていた。「え?」 「到着しました。出口は反対側です」言われて反対側を見ると確かに入り口と同じ扉が開いていた。 俺達以外にも数人が驚いた様子を見せながら出口から出て行く。恐らく初見かそれ以外かの違いなのだろう。「何が起きたのか全く分かりませんでした。流石は魔
魔法学園の学園祭だけあって、出し物は魔法を絡めたものが多かった。 教室に暗幕を掛けて光の魔法でプラネタリウムのようなものを見せたり、 冷気で快適な温度に設定された喫茶店なども休憩所として好評な様だった。「学生ごとに違った発想で出し物を考えていてすごいですね」 「あぁ。中には当日楽をする狙った展示物の様なのもあったけど」 「ふふっ。確かにあそこは受付の学生さん一人だけでしたね」などと出し物の感想を話しながら歩いていると、ドン!と右側から何かがぶつかってきた。「あいったたた・・・あ、ご、ごめんなさい」 「あぁ、いやこちらこそ。大丈夫か?」ぶつかってきたのは学生の女の子だった。走っていたうえ、ぶつかったのがちょうど曲がり角だったため避けられなかったらしい。「は、はい。全然大丈夫です。すみません。急いでいるのでこれで」そう言うと、彼女はこちらの返答も待たずに行ってしまった。「随分急いでいたみたいですね」 『・・・これ、さっきの子が落としたんじゃない?』ロシェがそう言って指さした先には革製の薄いケースのようなものが落ちていた。拾って見てみるとどうやら学生証らしい。先ほどの女の子の顔写真も載っていた。名前はクレアというらしい。「そうみたいだな。どこに行ったか分からないし、落とし物として案内所にでも届けるか」 『これだけ人が多いと気配を追うのも難しいし、それが無難でしょうね』ということで、多少寄り道しつつも案内所に学生証を届けると時刻は昼過ぎになっていた。近くの出店を見ていたカサネさんのところへ戻ると、男子学生と何やら話しているようだった。「お姉さん一人?実は俺も友達にドタキャンされちゃってさ、良かったら一緒に回らない?」 「いえ、連れが居るので」ナンパだった。ほんとに一人でいると良く声を掛けられている。こういう場だとなおさらかもしれない。ともあれ、カサネさんの機嫌がこれ以上悪くなる前にさっさと合流したほうが良いだろう。「お待たせ」 「あ、おかえりなさい」 「ちっ、ほんと
翌日、起きて一階に降りるとミルドさん達は既に家を出るところだった。「おはようございます。もう出るんですか?」 「おはようございます。えぇ、書置きを残しておいたんですけど、朝食は作っておいたので食べて下さいね。予備の家の鍵も置いてます。返却は今夜で構いませんから」 「え?今夜もお世話になっていいんですか?」 「え?・・・あぁ。そういえば言ってなかったですね。学園祭は明日まであるんですよ。ですので、もし急ぎでなければ明日も楽しんでいってください。今日とは違うイベントなどもあるみたいですよ」確かに昨日の話では何日間あるのかは聞いてなかった。 折角こう言ってくれていることだし、もう一日お世話になろうか。「そうだったんですか。急ぎの用はないので、もう一日お世話になります。何から何までありがとうございます」 「いえいえ、それでは行ってきます」挨拶を済ませると三人は荷物を持って家を出て行った。 少し遅れて起きてきたカサネさんと朝食を頂いてから家を出て、まずは学園の方に向かってみることにした。通りがかりに見てみると街の広場も既に賑わいを見せているようだ。「朝から結構にぎわってますね」 「あぁ、こっちは主に学園祭で集まってくる人をターゲットにした商売だな。本来なら商人の俺はこっちに混ざるべきなんだろうけど、まぁ今日は休日ということで学園祭を楽しむことにしよう!」 「ふふっ、変に拘っても気になって集中できないかもしれませんし、良いと思いますよ」 『あなたのスキルは割といつでもお祭りに近いと思うけどね』ロシェッテが呆れたようにそう言った。 確かにレベルが上がったおかげなのか、最近は店を開けば通りがかった人の何割かは何かしら買ってくれるし、旅の途中ですれ違う人達から取引を持ち掛けられることもあるのだ。「つまり普段から働いているわけだし、休んでも問題ないということだな」 『はいはい、そうね』そんな話をしながら学園へ向かう。学園が近くなるにつれて人が増えてくる。 やはりこちらがメインなだけあって集まっている人の数も段違い
「楽しみにしてます!」 「それじゃ、部屋に案内するよ。こっちだ」ミルドさんが抱えていた荷物を近くに置いて俺達を部屋に案内してくれた。 俺達はエフェリスさんに一礼してからミルドさんの後を付いていく。「こことその隣が空き部屋だ。掃除用具とかはあそこの籠の中にあるから好きに使ってくれ」ミルドさんが案内してくれたのは二階にある突き当りの部屋だった。「ありがとうございます。あと、学園祭のこと後で教えて貰っても良いですか?俺達基本的なこともよく分かってなくて」 「あぁ、構わない。夕食の時にも話題になるだろうから、その時に説明しよう」 「分かりました。お願いします」 「それじゃ、悪いが掃除の方は頼んだ。俺は準備の方を手伝ってくる」そう言うとミルドさんは一階に戻っていった。 部屋を開けてみるとどちらの部屋にも最低限の家具は置かれてあった。元は客間か誰かの部屋だったのだろうか?ただ、やはりしばらく使われていなかったようで、それらの家具は埃を被っていた。「それじゃ、美味しいデザート、いえ食事のために頑張りますか!」 「あ、あぁそうだな」カサネさんがいつになくやる気だ。こんなに張り切っているのを見るのは初めてかもしれない。よほどコロンケーキが楽しみらしい。 そうして夕食前までは各自で部屋の掃除を済ませた。 掃除を済ませて一階に戻ると、キッチンの前に知らない男性が立っていた。「ん?おぉ、あんたらがミルドの連れてきたお客さんか。俺はあいつの父親でカイゼルってんだ。よろしくな」俺達もカイゼルさんに挨拶を返すと、席に着くように勧められた。 言われた通り席に着くと、エフェリスさんが食事を並べてくれた。「お掃除お疲れ様でした。さあさあ食べて下さいな。コロンケーキはデザートでお出ししますね」エフェリスさんが振舞ってくれた料理はどれもとても美味しかった。 デザートだけでなく食事までごちそうを用意してくれたようだ。「とても美味しいです」 「お口にあったようで良かったわ」
聞いたことのある声に振り向くとそこに居たのはやはり、以前世話になったミルドさんとエリネアさんの二人だった。「ミルドさん、エリネアさん、お久しぶりです。俺達は魔導都市がどんなところか興味があって観光に来た感じです。あ、この人は俺の旅の仲間です」 「カサネです。よろしくお願いします」 「俺はミルドだ、よろしく。アキツグさんとは以前ある人の護衛中に一緒になってしばらく同行していたんだ」 「エリネアです。よろしくお願いします」二人は何かの荷物を抱えていた。届け物の途中とかなのだろうか?「にしても観光か、それは良いタイミングで来たな。明日は魔法学園の学園祭だからな。楽しんでいくと良い」 「そうみたいですね。知らずに来たのでびっくりしました。ただ、そのせいで宿屋が全部埋まってしまっていて。どうしようかと思っていたところなんです」 「あぁ、、それはそうだろうな。・・・良かったらうちに来るか?部屋なら余っているが」 「えっ?良いんですか!?」降って湧いた幸運に驚き聞き返す。「あぁ、知らない仲でもないしな。両親も一緒に住んでいるが、二人ともおおらかな性格だから、俺の友人なら気にしないだろう。アンタらが良ければだが」 「俺は良いと思うんだけど、カサネさんはどう思う?」 「皆さんが良ければ、ぜひお願いしたいです」 「そうか。ならちょうど戻るところだし、一緒に来るか?」 「あ、ちょっと待ってください。あともう一人、この子、ロシェッテも一緒で構わないでしょうか?」俺の言葉に、ロシェが姿隠を解いた。周囲に居た人達が軽く驚いた声を出して通り過ぎていく。二人も突然姿を見せたロシェに驚いたようだ。「ハイドキャットか。初めて見たな。アキツグさんの従魔なのか?」 「はい。ギルドで登録はしています。大人しい子なので迷惑を掛けることはないはずです」 「なるほどな。うちの両親は猫好きだし、たぶん大丈夫だと思うぞ」 「良かった」 「あ、あの・・・この子、撫でても大丈夫ですか?」何だかエリネアさんが期待に満ちた目で聞いてきた。初めて見る表情だ。
ハクシンと別れた後は特に何事もなくマグザまで来ることができた。 マグザは周囲を山に囲まれた窪地に作られた都市だ。 とある魔導士が隕石を落とした跡地に都市を作ったなんて逸話もあるらしい。 魔法学園は名前の由来だけあって大きく街の入り口からも見ることができた。 さらに学園の中には街の外からでも見える高さの塔が立っていた。街に入るとまずはカサネさんの希望で冒険者ギルドに向かった。 冒険者ギルドに入り、カサネさんは素材を売却するためにカウンターへ向かった。 俺は待つだけというのもなんだったので、何となく依頼掲示板を見に行くことにした。そこには様々な依頼が張ってあった。街中の下水道掃除や荷物運び、近辺のモンスター退治や素材採取など色々だ。 と、そこで俺は一枚の依頼に気づいた。「ハーピィ討伐依頼。貴重品の回収必須?」なんだかすごく思い当たる節がある依頼だ。というか間違いない気がする。「何だ兄ちゃん、まさかその依頼を受けるつもりか?止めときな、その依頼は俺達がこれから向かうつもりなんだ。早い者勝ちだから今から受けても無駄になるぜ?」 「え~と、いや、既に終わってるんです。この依頼」そう言って、俺はメギエスタから受け取った懐中時計を取り出した。「な、何だと?・・・確かにその懐中時計、依頼内容の品と同じじゃねぇか。何だよ、先越されたのは俺達の方ってことかよ」その男たちはがっくりと肩を落として、依頼掲示板の方へ戻っていった。どうやら別の依頼を探すことにしたらしい。なんだか悪いことをしたな。 でも、あの様子からまだ他に向かった人は居ないらしい。誰かがハーピィ討伐に向かう前で良かった。「カサネさん、ついでにこの依頼の報告も頼んだ」俺は受付に向かい、依頼用紙と懐中時計をカサネさんに渡した。「え?ハーピィ討伐依頼?・・・なるほど、そういうことですか。分かりました。」理解してくれたらしい。カサネさんは合わせて手続きを済ませてくれた。「それにしても、あのハーピィたちの討伐依頼が出ていたとは。ハーピ
「いや~助かった。ありがとうな。俺はハクシンってんだ」 「はぁ。俺はアキツグです」 「カサネといいます。よろしくお願いします」ロシェッテに気配も感じさせず突然現れた男は空腹で倒れていたらしい。手軽に食べられるものをとりあえず渡すと、美味しそうにバクバクと食べながらそう言った。「いや~それにしてもハーピィ相手に会話ができるなんてアンタすげえな」 「えっ!?・・・あ、いや、その撃ち落としたと思ったハーピィが生きてて可哀想になってしまったから、話し合って助けていただけですよ?」思わぬ発言に驚いてしまったが、咄嗟に言い訳する。 確かにハクシンが出てきた茂みは近かったが話声を聞けるほどではなかったと思う。スキルのことは話せないし、ここは何とか誤魔化したかった。「いやいや、俺は耳だけは良い方なんでな。ばっちり聞こえてたぜ。まぁ、安心しなって。アンタは恩人だからな。誰にも言ったりはしねぇよ」だめだったらしい。彼の言葉は嘘を言っているような感じではなかった。 まぁ誰にも言わないと言っているし、詳しく聞き出そうとしてくるわけでもなさそうだったので諦めることにした。「そうですか。すみませんが秘密でお願いします」 「あぁ、もちろんだ」 「それで、ハクシンさんは何故こんなところで空腹で倒れていたんですか?」周りは山岳地帯で近くに街があるわけでもない。彼は見た感じ特に持ち物もなさそうだった。マジックバッグを持っている可能性はあるし、見た目だけではあてにならないかもしれないが。「あぁ、山に籠って修行をしてたんだがな。集中していたら食い物が無くなっていたことをすっかり忘れちまってな。いや~面目ない」 「修行ですか。この山にはハーピィたちが住んでいるようですが、大丈夫だったんですか?」 「あぁ。あんたも聞いたみたいだが、奴らは人を襲ったりはしねぇよ。襲われても負けねぇ自信はあるけどな。ったく、師匠も面倒な課題を出しやがるぜ」ハクシンは師匠から出された課題で山籠もりをしていたらしい。 食べるのも忘れるほど集中していたらしいが、一体どん
攻撃されないことに気づいたハーピィが、少し落ち着きを取り戻したところで、俺はまず言葉が通じるかを確認することにした。「あんた、こっちの言葉は分かるか?」『・・・分かる。荷物奪おうとしてごめんなさい。殺さないで』 「荷物?俺達を狙ってたわけじゃないのか?」 「あの村からくる人達よく良い匂いさせてる。でも、人いっぱいだから諦めてた。あなた達少ないから奪えるかと思った」人がいっぱいというのは恐らく護衛のことだろう。俺達はロシェを入れても三人だし、日持ちする食材を荷台に積んでいた。狙うにはうってつけだったわけだ。「君達の種族はよくこんなことをしているのか?」 『そ、その・・・偶に。で、でももう二度としない。人間がこんなに怖いの知らなかった。約束する。だから助けて』う~ん。これはその場しのぎの様な気もする。怖くなさそうな人間だったら同じことをするんじゃないだろうか?とはいえ、言葉が通じてしまった以上命乞いしている相手を殺すっていうのもちょっとなぁ。。「人間達を襲わなくなったら君達が食糧に困るんじゃないのか?」 『楽じゃないけど、向こうの森には動物沢山いる。私達狩り得意だから大丈夫』 「そうか。なら口先だけじゃなく、本当に人間を襲うのは止めたほうが良い。こんなことを続けていたら、君達を狩る依頼が出されて君達を全滅させに来るぞ」俺の言葉にハーピィはまた恐怖で震えだした。『口先違う。本当に本当。二度と人間襲わない。誓う』 「そうか。仲間達にも人間達を襲わないよう約束させられるか?」 『たぶん、ううん。約束させる。ヒエラも見てたから二人で話せば信じてくれるはず』ヒエラというのはさっき逃げた相方のことだろう。彼女にどれだけの発言力があるかは分からないが、俺にできるのはこれぐらいか。「分かった。それなら今回は助けよう。その怪我も手当てしないとな」 『ほんと?本当に助けてくれるの?』 「あぁ」そう言って俺は傷口を見て効きそうな薬を塗って包帯を巻いた。 薬を塗った時は「痛い!痛い!」と騒いでいたが、少しすると痛み止
ハイン村での取引も問題なく終えられたため、俺達は次の目的地であるマグザの街へ向かっていた。「この辺は結構高い山が多いんだな」 「山岳地帯ですね。ハイン村で聞いたんですが、この辺の山にはハーピィの巣が結構あるらしいです」 「ハーピィ?」聞いたことのない言葉に俺が質問を返すと、ロシェが説明してくれた。『半人半鳥の魔物よ。翼で空を飛ぶことができて、上空から襲い掛かってきたり、魅了の歌で男を虜にしたりするわ』 「え?!それって大丈夫なのか?」 「今は二人も魔導士が居ますし、仮に魅了の歌を使われても私には効かないので大丈夫ですよ」 「二人、二人かぁ。まだちょっと自信はないな」 「ふふっ、少しずつ精度も良くなってますし、ハーピィに対して雷の魔法は相性が良いはずですから。期待してますね」カサネさんが楽しそうに笑う。ここ数日彼女には色々と魔法の指導をして貰っていたのだ。期待に応えられるように頑張らないとな。『あら、噂をしたらというやつかしら。早速来たみたいよ?』ロシェの声に視線の先を見てみると、翼を広げた女性のようなシルエットが二体、上空からこちらに向かってきていた。「アキツグさん、私が動きを止めますからそこにライトニングを」 「分かった」カサネさんの指示に従って呪文を唱え、タイミングを待つ。「エア・バインド」彼女が呪文を発動するとハーピィの1体が見えない鎖に縛られたように動きを止めた。それを確認してから、俺は狙いを定めて魔法を発動させた。「ライトニング」落雷はハーピィの片翼の付け根辺りに当たっていた。今回も微妙に狙いからずれてしまったが、バランスを崩したハーピィはそのまま落下した。 もう一方のハーピィはこちらに向かってきていたが、相方が雷に撃たれたのを見ると慌てて山の方に逃げて行った。「片方は逃げましたか。直ぐに逃走を選択するなんて意外と知能は高いんですかね?」 「どうだろう?本能的に危険を察知しただけかもしれないしな」そう言ってから、落ちたほうのハーピィの方に呪文
目が覚めると一面が真っ白な世界だった。 「なんだここは?俺は何でこんなところに?」 明らかに普通の場所ではない。スモークなどを焚いているのだとしても広すぎる。 目覚める前のことを思い出そうとするが記憶が朧気で思い出せない。 自分の名前、沢渡観世(さわたりあきつぐ)、25歳、職業:商人。 大丈夫。自分のことは覚えている昔の記憶も思い出せる。 分からないのは直近の記憶だけのようだ。「そこの人間」そんな風に自問自答しているとどこからか声が聞こえた。「誰だ?」 「こっちだ」声を頼りに後ろに振り返った途端、そのまま尻もちをついた。 そこには巨大な観音菩薩の仏像が浮いていたのだ。「か、観音菩薩?なんでこんなところに?というかさっきまでなかったよな?どうなってるんだいったい・・・」 「お前を呼んだのは私だ」 「し、しゃべった!?」再度、驚きの声が出る。確かに声は目の前の像から聞こえている。 誰かが揶揄っているのかと周囲を回ってみたが誰も居ない。「納得したか。では、本題に入ろう」 「本題?」 「そうだ。いきなりでは信じられないだろうがお前は死んだ」 「は?俺が死んだって、何の冗談だ?」 「冗談ではない。お前は旅の途中、暴走してきた車に撥ねられて即死だった」車に?そう言われて記憶に引っかかるものがあった。突如坂を乗り越えてこちらに迫ってくる車の映像がフラッシュバックする。「ぐっ!今のは、、まさかあれが死ぬ間際の?」 「思い出したか。では、お前には二つの選択肢がある」 「待て待て、自分が死んだってことすらまだ信じられないのに。突然選択肢とか言われても・・・」 「そうだろうな。好きなだけ悩んで構わない。選択肢は天国へ行くか異世界へ行くかだ」 「異世界?いや、天国はまだ分かる。死んだら行くって言われてるからな。異世界ってなんだ?」唐突に聞こえた不自然な単語に思わず疑問が声に出た。「お前は選ばれた。輪廻の均衡を維持するための例外として。とはいえ元の世界に返すわけには行かない。だから別の世界で生きよということだ」 「輪廻の均衡ってなんだ?」 「詳しくは話せぬが、世には極稀にまだ死ぬべきでない者が早死にすることがある。そのような者達を全て死後の世界へ送ってしまうと輪廻に歪みが生じてしまう。それを防ぐため選ばれた者に生を謳歌させ均衡...
ความคิดเห็น