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第37話

慎一の心理的な防御を一度高めてから期待を下げる。そうすれば、彼が私の要求に応じる可能性は高くなるはずだ。

案の定、彼は冷たい声で言った。「あなたがどんなに頼んでも、二度とあなたに触れるつもりはない」

私は得意げに微笑んだが、心の中ではそれほど嬉しくなかった。淡々と唇を引き締め、彼がその言葉をしっかり覚えていてくれればいいと思った。

雲香を学校に送るくらいのこと、大したことではない。私はうなずき、「交渉成立だね」

私はあっさりと同意し、慎一は軽く眉をしかめて私を見た。

「彼女に転校が彼女のためだって、ちゃんと説明してくれ」

「わかった」

「彼女はまだ俺たちが喧嘩してるんじゃないかって疑っている。それを否定しておいてほしい」

「うん」

彼は少し間を置いてからさらに要求を加えた。「彼女はすごく敏感だから、あなたの説明が自然じゃないといけない。少しも疑わせないように」

私は無表情で笑った。慎一は本当に私を人間扱いしていないな。

これが完全に開き直ったということだろう。

「大丈夫!」私は彼の目をじっと見つめた。冷たい感覚が体中を走り抜けた。

――

その夜、私は慎一の隣にずっと付き添い、他人からの賛辞を聞いていた。

義両親に愛され、夫は紳士的で一途、それが周囲の私に対する印象だった。霍田家の妻という立場はすでに確固たるものだった。

私は別の目的を持っており、会話中にわざと自分の仕事について触れた。

相手がどう思おうとも、慎一の顔を立てて私を褒めるようにし、私が差し出す名刺を丁寧に受け取っていた。

慎一は私の行動を黙って見ていたが、態度は崩さなかった。

愛が得られないなら、他のものを掴むしかない。自分のビジネスを広げるため、これが私にふさわしい報酬だと思った。

遠くから雲香の視線が私を刺すように感じた。彼女の目は欣賞と愛慕、侵略と所有欲が入り混じり、それは兄妹の目つきではなく、まるで男を見ている女の目つきだった。

その視線に背筋がぞくっとした。

私は慎一ほどの忍耐力はなく、宴会場の中心を離れ、隅に逃げ込んだ。ほっと息をついたところで、二人の女性が私の噂をしているのを耳にした。

「この宴会、霍田社長と彼の奥様がラブラブだって見せつけるために開かれたんですって。羨ましい限りだわ」と、一人の女性が口を押さえて言った。

「そうよね。どうして
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