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第54話

私はずっと前田署長を引き留め、慎一と話をさせないようにしていた。もし慎一が私を追い詰めようとしたら、私が警察から出られなくなるかもしれないからだ。

できる限り時間を引き延ばして、穎子が警察に来て私を保釈してくれるのを待つしかなかった。

私が前田署長と話していると、ついに穎子が到着した。

それだけでなく、なんとなんと夜之介まで連れてきたのだ!

彼は白いシャツを着て、その裾がスーツのズボンにきちんと収まっていた。彼の立ち姿はまっすぐで、堂々としている。眼鏡をかけており、知的で優雅な印象を与えるが、眼鏡の奥の目は鋭く、まるで真実を見据える勇敢な英雄のようだった。

彼を見た瞬間、私の頭に「正義不滅、公理のもとに」といった言葉が浮かんだ。

その瞬間、私は胸がいっぱいになり、誰かに信じて選ばれることのありがたさに感動した。

穎子は私のそばに駆け寄り、椅子から立ち上がらせた。「大丈夫?」

私は首を振り、自然と夜之介の視線を探したが、彼は特に私に注目する様子はなかった。

彼は直接前田署長に向かい、私を保釈する手続きを依頼した。

前田署長は夜之介に対して非常に丁寧で、すぐに態度を和らげた。「夜之介先生、佳奈さんと知り合いだとは早く言ってくだされば、電話一本で済んだのに、わざわざお越しいただくことはなかったですよ」

前田署長のような地位に就いている人間は、功績もコネもあるが、やはり敏腕だ。

彼が私を「佳奈さん」と呼んだのは初めてだったが、残念ながら彼の計算は外れた。私と夜之介はそれほど深い関係ではないのだ。

私は彼がこんなに礼儀正しいのに少し驚いた。弁護士と警察はしばしば関わることがあり、彼らが顔見知りであっても不思議ではない。しかし、ここまで敬意を払っているところを見ると、夜之介の背後にはもっと複雑な事情があるのかもしれない。

彼に対してますます興味が湧いた。そもそも、私は穎子だけに連絡したのに、彼女がこのことを夜之介に伝えたに違いない。

前田署長が夜之介に話しかけると、彼は私に目を向けて「怪我はしていないか?」と静かに聞いた。

私は頷き、微笑んだ。

前田署長は慌てて言った。「夜之介先生のおっしゃる通りです。佳奈さんに簡単に事情を伺っただけで、もう問題は解決したので帰っても大丈夫です」

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