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第52話

「何ですって?」

私は驚いて口を開けた。「そんな脅しには乗らないわ。世の中にあなたみたいな人がもう一人いたら、びっくりするわ。警察がそんな簡単に冤罪を着せるなんて、ありえないわ」

慎一は私が怖がっていると思ったのか、冷たい目で私を見下ろしながら言った。「病院に着くまであと10分だ。雲香に謝るか、警察に行くか、選べ」

彼はそう言うと、再び車を発進させた。私は彼が本当に警察が私を待っていると言っていることをだんだんと信じざるを得なくなった。

しかし、だからといって、やってもいないことを認めることなんてできない!

私は再び前田署長と会うとは思っていなかった。彼は自ら病院に来て、雲香に事情聴取を行い、ついでに私を連れて行き、警察の捜査に協力するよう言ってきた。

ホームレスは、私が彼に依頼して殺人を指示したと断言していた。額の汗を拭きながら、前田署長は「仕方ない」と言いながらも、手続きは踏まなければならないと言った。

慎一は彼に一瞥もくれなかった。前田署長は小さな区域の署長であり、慎一のような大物とは社交的な繋がりを持てるような人物ではなかった。慎一が彼を無視するのも無理はない。慎一はめったに人に顔を立てることはしないからだ。

まるで、前田署長が私をどう処分しようと、彼には全然関係ないかのように、慎一はまっすぐ病室へ向かった。

病室の中では、霍田家の二人がソファに座って厳しい顔をしていた。雲香はベッドの上で涙を流していた。

その光景は、閉まるドアに隠され、私は突然孤立無援の無力感に襲われ、しばらく動けなかった。

「霍田夫人、申し訳ないですが、私たちに同行していただけますか?」と前田署長が私の前に来て言った。

「はい。でも、10分だけ時間をいただけますか?少し話をしてから出て行きます」

前田署長は頷いた。「もちろんです。外でお待ちしています」

私はドアを押し開けた。霍田夫人はハンカチで涙を拭いており、ため息をつきながら言った。「佳奈、怖がらないでね。これは何かの誤解に違いないわ。私と悠真は、あなたが殺人を依頼するなんて犯罪行為をする人だとは絶対に信じないから」

「バカ息子!外での騒ぎを早く片付けろ!病院まで巻き込むなんて、恥ずかしいことだ」霍田夫人は涙ながらに叫び、悠真は彼女を抱きしめて静かにあやしていた
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