共有

第41話

この車は慣れていないから運転しづらい。霍田家の車はとにかく大きい。それでも、この車が高級車であることは、車のロゴを知らなくても誰にでもわかる。私はアクセルを踏み込み、他の車が道を譲ってくれるのを感じながら、全神経を集中させて運転していた。

「雲香、お前はもう自分を傷つけるな。お前の血は貴重なんだ。体を大切にしろって、何度も言っただろう」

慎一の真剣な顔が引き締まっている。

普段は冷たい彼が、雲香にはいつも我慢強く、特別に優しかった。

雲香は微笑んで答えた。「佳奈のこともちゃんと守るって言ったよね?彼女が傷つくの、私も辛いの」

「他人の血ならすぐ見つかる。でもこの街で、お前みたいな希少血液型は3人しかいないんだ。お前に何かあったら、どこから血を手に入れるんだ?」

「お兄ちゃん、その3人の連絡先はちゃんと持ってるでしょ?それに、彼らの住所も知ってるじゃない。だから大丈夫だよ、お兄ちゃん」

兄妹の会話はまるで感動のシーンみたいで、私は「感動」して涙が出そうになった。視界がぼやけ、ハンドルを強く握った。

無視しようと努力しても、彼の「他人」という言葉が私の心に突き刺さった。

どういうこと?

雲香は傷ついてはいけなくて、私はナイフで刺されてもいいってこと?

胸が締め付けられるようで、息をするのも苦しい。

「ビーッビーッ!」

曲がり角から急に出てきた配達バイクに気づかず、私は急ブレーキを踏んだ。

車内の全員が慣性で前方に投げ出され、私の腹がハンドルに激しくぶつかった。幸いにも誰にも怪我はなかったが、雲香の傷口が激しい揺れで開いてしまい、彼女は我慢していた痛みに耐えきれず、泣き崩れた。涙が小さな顔を濡らしていた。

彼女は首を仰け反らせて、慎一の胸の中で泣きながら、「お兄ちゃん、痛い......!」と叫んだ。

慎一の視線は雲香に釘付けで、私には一瞥もくれず、彼女をかばうその姿は明白だった。「佳奈、お前、いい加減にしろ!」

「違うの、ただ――」

「お兄ちゃん、佳奈を責めないで。彼女だってこの車を運転するのは初めてだし、慣れてなくて当然よ」

私は必死に歯を食いしばり、反論する言葉を飲み込んで腹痛をこらえ、再びエンジンをかけた。

雲香はかなりの血を流していた。慎一が血まみれの彼女を車から抱き上げた時、霍田夫人は気を失いそうに
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status