第32話

慎一は私を解放した。

それは、私たちの絆のためじゃなく、雲香が彼を待っているからだった......

「涙を拭け。帰ってから、余計なことは言うなよ」彼は命令口調で言った。

旧宅に帰る車の中、三人は誰も口を開かなかった。

私は助手席に座り、怯えた雲香は慎一の腕の中にいた。彼女は相変わらず慎一にぴったりとくっつき、二人の身体は密着していた。

慎一の大きな手は、雲香の頭を優しく撫でていた。二人のやり取りは、親密で自然だった。

私は、この関係に縛られていることに、深い悲しみを感じた。

後部座席の変な角度から、慎一の黒い瞳が私を見ているのがわかった。双子のような感覚で、彼の視線はいつも私を刺すようだった。

彼は愛する妹を腕に抱きながらも、私を見つめる余裕があった。

後部座席と孤独な私の間には、目に見えない壁があるようだったが、慎一はその壁を何度も打ち破ってくる。

その奇妙な空気に息が詰まり、胸が痛むほどだった。

私は目を閉じ、頭を窓ガラスに寄せ、彼と目を合わせないようにした。

だが、彼の声はそれでも聞こえてきた。「お前の先生が俺に言ってきた。これ以上授業をサボると、卒業できなくなるぞ。霍田家では、大学を卒業できなかった者はいない」

「ごめんなさい、お兄ちゃん」

「お前、学校を変えた方がいいかもしれないな」

慎一の言葉を聞いて雲香はすぐに顔をうつむいた。成績が悪いせいで彼女が恥ずかしがっているのかと思っていた矢先、彼女は突然背筋を伸ばし、声が泣きそうになりながら言った。

「佳奈、転校するのはあなたの意思なの？」

......

まるで私が悪者みたいだ。

目を開けると、慎一は冷静に右足を左足の上に組み、何も説明するつもりはないようだった。

私は平静を装って、「雲香、どうしてそんなことを思ったの？」

すると、彼女は驚いたように私を見つめ、「佳奈、どうして着替えたの？」

彼女の目に映る驚きは明らかで、その堂々とした態度に、まるで私が悪いことをしたみたいな気分になった。まるで、さっき慎一としたことが不道徳だったかのように。

私は彼女をじっと見て、「ただ服を着替えただけよ。何か問題でも？」

さすがに私は我慢できなくなっていた。何度も同じことを言われるのは耐えられない。

「い、いや、何でも