第18話

康平は、体にぴったり合った黒いスーツを着て、椅子を引きながら背筋を伸ばして私の向かいに座った。彼と夜之介が親しいのは一目瞭然で、二人は兄弟のように楽しそうにしばらく話し込んでいた。

その話が終わった頃、ようやく私に気づいたのか、康平は両腕を抱えて、顔に嘲笑を浮かべた。「これは佳奈ちゃんじゃないか？ どんな風が吹いて君をここに運んだんだ？」

私と康平が最後に会ったのは、年始に彼が霍田家の旧宅に新年の挨拶に来た時だった。霍田家と鈴木家は代々の付き合いがあり、安井家も鈴木家とは家族ぐるみの関係だった。

私の名前は佳奈、彼は康平。幼い頃、両家の大人たちは私たちを結婚させようとしていたので、いわば幼なじみだった。

しかし、私と康平の幼なじみ関係には、あの若い頃の曖昧な恋心は混ざっていなかった。むしろ、お互いを嫉妬しあい、ねじれた「愛憎半ば」のような関係だった。

いや、そもそも「愛」なんて存在しなかった。ただの「憎」だけだった。

真の敵だったのだ。

小学1年生の時、私が彼よりも20点高い点数を取ったため、彼は家で叱られた。その次の日、彼は私の髪を乱暴に引っ張った。私が家に帰って告げ口をすると、彼はまた父親に皮鞭で叩かれた。

彼は家を飛び出し、うちの庭の外から私の窓を指差して、罵倒した。「康平と佳奈は一生敵だ！」と。

その日から私たちは幾度となく対決を繰り返した。私の生理の日に彼はこっそり私のナプキンを隠して、クラス中の男子に恥をかかせ、私は彼が学校のアイドルに告白したラブレターを家に持ち帰り、彼のお母さんに読み上げさせた。

その時、彼の父親がまた皮ベルトで彼を叩く姿を見て、私は満足した。

お互いに徹底的にやり合ってきたが、どちらも負けを認めたことはない。

私は視線を落とし、頭の中から苦い記憶を追い払った。今や、勝敗は明らかだ。

四年前に渡された名刺は、私への評価の表れではなかった。そして、四年間ずっと私に仕事に戻るよう説得していたのは、夜之介による穎子への洗脳だった。そのすべてが、実は康平の仕掛けた罠だったとは。

「長い釣り糸を使ったわね」

想像していたほど怒りは感じなかった。むしろ、その巧妙な計画に感心した。これほど綿密に仕組まれたのだから、今の私が働きたいと思った瞬間に雇ってくれる場所