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第25話

「お前たち薊野家の北部の土地が欲しい」

梁井信田は思わず口走った。

薄暗い個室の中、晴子は深川のはっきりとした輪郭の顔を見た。彼の顔には軽蔑的な笑みが浮かんでいた。

「ふん、今どき皆ハイテクなものに手を出してるのに、梁井さんはまだ土地ビジネスをやってるのか」深川は嘲笑うように言った。「それに、3年前の土地で俺の会社を吸収したじゃないか。まだ土地が足りないのか?」

「深川、何を装ってる!3年前の土地なんて、俺の手には入ってないぞ!」

梁井信田は怒りのあまり、晴子の腹を蹴った。「こいつが入札価格を外国人に売り渡したんだ。その金をこの女がお前に渡さなかったとでも?」

深川は床で苦しむ晴子をちらりと見た。目を伏せ、眉間にしわを寄せ、拳を固く握った。

「梁井さん、土地は既に瀬名に渡した。土地が欲しいなら、お前の後ろにいる女を縛るのが一番いいだろう」

深川は冷淡な口調で紗耶を指さした。

梁井信田は振り向いて紗耶を見た。「土地は瀬名のところにあるのか?」

紗耶は恐怖で目を見開き、手を振りながら後ずさりした。「知りません!澄人は私に何も言ってません」

あの日病院で送られてきたのは、まさか町北部の土地の契約書だったの?

澄人は保険の契約だと嘘をついたなんて!

紗耶は自分が失敗したことを悟り、逃げ出そうとしたが、梁井信田の部下に捕まってしまった。彼女は必死にもがきながら、澄人の名前を叫んだ。

しかし、誰も応えなかった。

「梁井さんに正しい道を示したから、この子は連れて行くぞ」

深川が立ち上がり、床に横たわる瀕死の晴子を抱き上げようとした瞬間、背後に硬いものが押し当てられた。

晴子は黒々とした銃口を見て、「深川!」と叫んだ。

汚れた顔には汗なのか涙なのか分からない液体が流れ、血で汚れており、普段の美しい顔立ちは見る影もなかった。

深川は背後の人間が発砲することを少しも恐れていないようだった。彼はしゃがみ込み、指で優しく晴子の涙を拭った。

顔に張り付いた髪を耳にかけ、腕を彼女の腰に回して抱き上げた。

「もう一歩前に出たら、すぐに撃つぞ!」

梁井信田はようやく自分が騙されていたことに気づいた。紗耶が知っていたかどうかに関わらず、深川がここに現れたということは、彼が全てを事前に知っていたということだ。

もしかしたら、今日の出来事全てを見ていたのかも
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