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第23話

「彼女を連れてこい!」

電話から梁井信田の声が響いた。ボディガードたちはほぼ即座に行動し、晴子の首筋に注射器を刺した。

彼女はその場でくずおれるように倒れた。

黒い高級車が消えた後、向かいのマンションのエレベーターホールから誰かが出てきて、手の電話をかけた。

「彼女の連行を確認した。行動開始だ」

晴子はとても長い夢を見ているような感覚だった。夢の中には深川、南生、君弥、依織、澄人、紗耶がいた。ほとんど全ての人が夢の中に入り混じり、嫌な出来事を再現していた。夢の中で彼女は苦しみ、心臓が引き裂かれるような感覚だった。

目を開けて目覚めようとしたが、どうしても開くことができなかった。

耳元では梁井信田たちの会話がはっきりと聞こえ、彼が部下を叱責している。君弥の監視を怠ったことを責めていた。

突然、一杯の氷水が彼女にかけられ、晴子は目を覚ました。

晴子は苦労して目を開けたが、目覚められたことにも感謝した。

梁井信田が地面にしゃがみ込み、手で晴子の顎をきつく掴んで、強制的に目を合わせさせた。

「晴子、お前の図々しさにも程がある。3年前に俺を裏切り、3年後もまだ俺のために働こうとしない。

本当に自分の命が惜しくないのか!」

梁井信田は手を上げ、晴子の頬を強く叩いた。晴子は頬が火照るのを感じ、口角に痛みが走り、口の中に血の味が広がった。

「信じるかどうかは別として、君弥を連れ出したのは私じゃないわ」

晴子は今回、嘘をついていなかった。彼女の言葉には真摯さが滲んでいた。

梁井は一瞬驚いた様子を見せた。「お前、瀬名澄人に頼んだんじゃないのか?」

彼は立ち上がり、椅子に座り直した。晴子もその隙に床に座り込んだ。周囲を見回すと、初めて江口紗耶に誘拐されたときの光景が脳裏によみがえった。

まさか信田紗耶が梁井信田と手を組んでいるのか?

「梁井さん、さすがですね。北原市でも同志を見つけられるなんて!」

晴子が皮肉を込めて言うと、案の定、屏風の後ろから艶やかな人影が現れた。馴染みのある香りが漂ってきた。紗耶だった。

「ふん、なかなか頭が回るじゃない」

紗耶は冷笑しながら、一歩一歩晴子に近づいてきた。

「本当はあなたなんかに時間を費やしたくなかったのよ。でも、またあなたが澄人を探しに行くなんて!私と澄人はもう結婚するところだったのに、あなたは何のため
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