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第20話

晴子は素早く手を引っ込めた。澄人は空っぽになった掌を見つめ、苦笑いを浮かべた。

「深川さんもそうじゃないですか?」

澄人は数歩前に進んだ。彼はあらゆる人脈を使って、ようやく深川律と晴子の北原市での過去を調査できたのだった。

深川は怒るどころか笑みを浮かべ、晴子に手招きした。「こっちに来い」

晴子は思わず目を転がした。こっちに来いって、自分を犬だとでも思っているのか?

しかし今は彼の面子を潰す時ではない。晴子は空気を読むべきだと分かっていた。そこで、彼女は小走りで近づいていった。

深川は怒りを抑えながら、晴子が近づいてくるのを見ていた。

彼女を一気に抱き寄せると、晴子が反応する間もなく、温かい唇が覆いかぶさってきた。彼は彼女の唇を噛みながら、舌を差し入れた。

晴子の呼吸が荒くなり始めた。深川は挑発するように、余所見で少し離れたところに立つ澄人を見た。

澄人は拳を強く握りしめたが、深川に対して何もできなかった。

浜江市は今や薊野家の天下だ。彼は私生児で、実権を握っていても瀬名家の旦那の承認を得られず、瀬名家での地位さえ安定していない。深川律と争う力など持ち合わせていなかった。

晴子は澄人が遠ざかるのを見て、深川を突き放した。

「どうした?怒ったのか?」

深川はわざと唇を拭い、からかうように晴子を見た。

「怒る資格なんてありませんわ。私は深川さんに飼われた犬に過ぎないんですから」晴子は冷ややかに鼻を鳴らし、踵を返して歩き出した。

深川は怒る様子もなく、今や晴子を手に入れた以上、他のことは些細なことのように思えた。

彼は笑いながら前に走り出し、横目で近くに停まっている3、4台の黒いワゴン車を見た。そして晴子を抱き上げ、彼女の抵抗を無視して車に向かった。

「じゃあ、主人とすべきことをしよう。

発進」

深川は晴子を後部座席に押し込み、前後のカーテンを引いた。

シートの背もたれの隠しボタンを押すと、晴子は背もたれとともに後ろに倒れた。深川は片手で彼女の頭を守りながら、身を乗り出して覆いかぶさった。

「何をするの!」

晴子は瞬時に顔を赤らめ、カーテン越しに前席を見た。

「んん!」

深川は何も答えず、彼女の口を塞ぎ、舌が口腔内を巧みに攪拌した。

彼女は次第に息苦しくなり、体をよじって抵抗し始めた。しかし深川には彼女を放す気配がなく、彼
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