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第19話

二人は長い間にらみ合っていたが、晴子が諦めたように目を伏せ、ため息をついた。「深川さん、私を解放するにはどうすればいいの?」

深川は目の前の女性を見下ろし、再び悔しさが込み上げてきた。

彼女と瀬名を引き離したのに、なぜまだ自分のもとに戻ろうとしないのか?

深川は眉をひそめたが、手の力を緩めた。

「解放だと? 夢見るな!」

深川は晴子の首筋に顔を埋め、細かなキスを怒りと共に降らせた。晴子の体が震えた。

晴子はもはや以前のような抵抗を見せなかった。最初は澄人に見つかることを恐れていたのだろうが、今は何も恐れることはないのだろう。

晴子の目は霞み、意識が徐々に遠のいていった。

深川律を愛しているかどうかは別として、少なくとも彼女の体は彼を求めていた。

晴子が季松家の令嬢ではなく、別の男性と関係を持ったというニュースはすぐに浜江市中に広まった。その相手が薊野家の外孫、深川律だという情報は、再び晴子の運の良さを人々に感じさせた。

「エンチャント」の仲間たちから次々と祝福の電話がかかってきた。晴子がまた出世したことを羨ましがった。

中には、薊野家の子供を身ごもって、子供を通じて地位を得るべきだとアドバイスする者もいた。

晴子は携帯電話に届いたメッセージを見て、苦笑いした。

彼女は深川にとって単なる玩具に過ぎないのだから。

晴子は携帯を仕舞い、目の前の生気のない弟、勝谷君弥を見つめた。胸が刺されるような痛みを感じた。

どうすれば弟を守れるのだろうか。

3年前、北原市で深川の契約書を盗み、緩利依織と共に外国の業者に売った件について、晴子には説明のしようがなかった。

最終的に外国の業者に売った金は、全て薊野南生に渡したのだが。

しかし、結局南生は梁井信田の手にかかって死に、その金も恐らく深川の手には渡っていないはずだ。

深川は晴子が梁井信田に強制されてそれをしたと思っているが、もし最初から梁井信田の仲間だったと知ったら、本当に彼女を殺すかもしれない。

「晴子?」

馴染みのある声がした。振り向くと、入口に瀬名澄人が立っていた。

晴子は病室を出て、澄人と共に病院の下階に向かった。

振り返ると、病室の前を行き来する人々が見えた。彼らは皆、梁井信田の手下だ。

「お先におめでとう、澄人さん。ご結婚おめでとうございます」

「晴子......」

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