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第4話

「澄人さん、このドアが壊れちゃったみたい。先に行っていて。私はちょっと化粧直しをしてから行くわ」

澄人が何か言おうとした時、背後から呼び声がした。澄人はそちらに対応せざるを得なくなり、ドアの中の晴子に言った。

「わかった。後で自分で来てくれ」

「はい」

晴子は素早く返事をし、緊張していた体がその瞬間にほぐれた。

深川は腕を組んで晴子を観察していた。彼女の澄人への話し方は柔らかく無害で、どこか気取った様子さえあり、まるで小さな白ウサギのようだった。

「夢夜、お前は澄人の前で役を演じているのか?無垢で清楚な乙女のふりをしているわけか?」深川はそう言いながら、縛っていた紐を解き、彼女に自由を与えた。

「深川さん、あれを私の体から取って!」

「夢見るのはやめろ。今回のは俺以外には外せないんだ」

晴子が手を伸ばして取ろうとしたが、その冷たい感触がほとんど肌に密着していて、取り外す余地が全くないことに気づいた。

二人は怒りの目を向け合い、険悪な雰囲気が漂った。晴子は深川が言葉通りに行動する人間だと知っていた。今回、彼女は本当に彼の手中に落ちてしまったのだ。澄人があの下の物を発見したら、どうなるか想像もつかなかった。

「深川さん、あなた変態よ!」

深川は全く気にせず、興味深そうに晴子が床から下着を拾い上げ、身支度をするために洗面所に向かうのを見ていた。彼は晴子の後ろについて行き、ドア枠に寄りかかって、鏡に映る化粧をする女性を眉を上げて面白そうに眺めていた。

晴子が休憩室を出るまで、深川は何も妨げようとしなかった。晴子は遠くまで歩いてから振り返り、あの休憩室を見つめ、心中不安を感じていた。

下半身の違和感で、歩くのも少し不快だった。

晴子は振り返って閉じられた休憩室を見つめた。深川の今回の帰還は彼女への復讐なのだろうか?

突然何かを思い出したように、晴子は慌てて携帯電話を取り出した。まだ電話をかける前に、着信が入った。

「夢夜、深川が戻ってきたわ」

緩利依織からだった。かつて一緒に深川の下で働いていた彼女は、深川が事故に遭った後、北原市から逃げ出していた。深川が自分を見つけたなら、きっと彼女も見つけているはずだ。

「知ってるわ」晴子は声を低くして言った。「気をつけて。どうしようもなくなったら逃げてね」

「わかったわ」

晴子は電話を切り、心中
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