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第070話

篠崎葵は一人で船底の船室に座り、目の前の山積みの服を見つめていた。どれもこれも、露天市場の安物以下のような代物だった。

それに、どの服も布の量が少なすぎて、見るだけで自分が着た時の下品さが想像できた。

しばらくためらってから、彼女はその中で比較的保守的で、学生っぽさのある制服を選んだ。

この服装に、メイクアップアーティストが描いた安っぽくも妖艶なメイクを合わせた姿で、篠崎葵はトレーを手に会場に出て行った。すると、目の前に現れたのは宮川玲奈だった。

彼女は篠崎葵を上から下まで値踏みするように見た後、皮肉っぽく言った。「ほらね、案の定、清純系で来ると思ってたわ。でもね、自分でよく考えなさい。清純系で行くなら、小遣いをくれる人なんていないかもしれないわよ」

そう言うと、宮川玲奈は篠崎葵を連れて、ワイングラスを手に持つ貴族の子弟たちのグループの前へと進んだ。「さあ、紹介するわ。今日皆さんに楽しんでいただくために特別にお呼びした臨時パフォーマー、篠崎さんです。彼女こそ真の変幻自在の女王よ。どんなコスチュームやポーズを望むか、皆さん自由にリクエストしてね。もちろん、出過ぎてはいけないよ。ここはあくまで文明的な場所だから」

「おー、いいね!」

「このゲーム、面白そう!」

「フフフ、これは見ものだ!」

宮川玲奈は笑顔で、あらかじめ忠告も忘れなかった。「ちゃんとチップを忘れないでね。篠崎さんはそれで生計を立ててるのよ」

「心ゆくまで見せてもらえれば、チップは惜しまないさ。あとは篠崎さんがどこまで楽しませてくれるか次第だな!」誰かが甲高い声で叫んだ。

普段は厳しい家族に縛られているこの若い貴族たちは、自由に遊べる場所が少なかった。だから、こんな風に目の前に自らやってきた女性を見て、誰もが張り切ってからかおうとしていた。

彼らは口々に侮辱的な言葉を投げかけたが、あくまで「ルール」は守っていて、実際に手を出すことはなかった。

一方、少し離れた場所で欄干に寄りかかっている桜庭隆一は、集団の中心で赤面し、困惑しているものの、何とか平静を装っている篠崎葵の姿を見つめていた。彼は横にいた須藤祐言に笑いかけた。「この小娘、今日は金のために体を張ってるな。惜しいな......」

「何が惜しいんだ?」須藤祐言が尋ねた。

「本当は俺がちょっといじって遊ぼうと思ってたんだけど、
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