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第80話 監視カメラを確認しよう

「謝罪を受け入れたくないなら、無理に我慢しなくてもいいのに」

椿が口を開き、穏やかな口調で言った。

奈央は軽く笑い、

「あなたが言った通り、伊野家は関谷家とは違うわ。一時的にはどうしようもできないし、謝罪を受け入れないなら他に方法があるの?」

「僕が手伝えるよ」

彼は言った。

奈央はまるで怪物でも見たかのように彼を見つめ、二歩後ろに下がった。

「相手は幼馴染なんでしょ?そんなふうに裏切るのって、本当にいいの?」

「ただの友達だ」

椿は真剣な表情で言った。

「幼馴染じゃないんだ」

しかし、奈央は全く気にしなかった。

「宇野さん、いいの。前も言ってたよね、私たちそんなに親しくないもの」

「霧島……」

「椿!」

百恵が、栄介を支えながらトイレから出てきた。彼女の顔色は悪かった。

「栄介が誰かに殴られたわ」

この時の栄介は、鼻が腫れて顔が青あざだらけで、まるで何かの塊のように見えた。奈央は口を押さえ、思わず笑いそうになった。

栄介はゆっくりと意識を取り戻し、次の瞬間、奈央を指差して怒鳴った。

「お前だ!お前が後ろから手を出したんだろう?」

「伊野さん、言ってる意味が分かりません」

奈央は無邪気に目をぱちぱちとさせた。

百恵も奈央に視線を向けた。彼女も奈央がやったのではないかと疑っていた。この場では、栄介に恨みを持っているのは奈央しかいないし、陰で手を出すことも不可能ではなかった。

「とぼけるな!お前以外に誰がいるんだ!」

そう言いながら、彼は奈央に向かって殴りかかろうとした。

もちろん、椿が彼に奈央に触れる機会を与えるはずがなかった。彼は栄介を止めて、

「証拠もないのに、彼女だと言うのか?伊野、頭が悪いなら、僕が助けてやってもいいんだぞ」

栄介は奈央を恐れていなかったが、椿を恐れていた。彼が口を開くと、栄介は百恵の後ろにすぐに隠れ、恨めしそうに奈央を見つめた。

百恵は怒りを抑え、冷静に言った。

「監視カメラを確認しましょう。誰であろうと、カメラには嘘がつけませんから」

「い……」

「どうぞ」

奈央は椿の言葉を遮り、淡々とした表情で、まるで何も後ろめたいことはないといった風情だった。

それを見て、椿はそれ以上何も言わなかった。奈央がこれほど自信を持っているのなら、監視カメラで証拠が出ないことは確信しているのだろ
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