共有

第86章 遠い未来を繋ぐ

関谷家が倒産し併呑されたことはすぐ泉ヶ原で知れ渡っていた。その曇天返しで驚いたものは少なくなかった。

宇野椿とは因縁深かったあの関谷家はそのままあっさり泉ヶ原の舞台を退場した?

街の人々たちは驚きのほか、その理由が気になった。恨みを買ったという人もいれば、一層のこと宇野椿の恨みを買ったという人までもいた。異なった意見を持った人はどこでも転がっていた。

けど、間もなくして、関谷家を併呑したのは大賀翔によって立ち上げられたヒバリグループだったと一部の人に知られたのに伴い、泉ヶ原で住んでいた人々の誰もが、心の中に撒いたゴシップの種を芽生え出させた。

ニュースでそのことを見た時、奈央は何こともなかったようで、涼しい顔をしていた。元々関谷家は隙だらけで、自分が翔兄に流した情報を加えば、潰されて倒産しなかったほうが可笑しかった。

ただ、翔兄がもう動いて結果を出したのが彼女の想定外だった。もっと時間をかかるかと思っていた。

彼女にはじっくりとこのことを吟味できるほど余裕を与えられていなかった。なぜなら、皐月はもうドアにノックして入ってきたからだ。

「Dr.霧島、オペ室のほうの準備はもう整っています」

「分かった、今行くよ」

頷いた奈央はそう言いながら、椅子から立ち上がって、オフィスを出た。

彼女の後ろについていた皐月は、とっても嬉しそうに話しかけた。

「Dr.霧島が火星に来てくれてから、脳外科の手術の量は激増しました。Dr.霧島に診ってもらうため、わざわざと地方から来た患者さんもたくさんいるって、主任が」

彼女は心底から、奈央のことを尊敬していた。そして奈央のような立派な医者になることを志していた。

「我々医者にとって、一人でも多くの命を助けることが筋だよ」

奈央は名誉などをあまり気に留めていなかったから、皐月がそこまで舞い上がっていた理由をも機会できなかった。

「おっしゃる通りです。患者さんの命を救うのが大事です」

皐月は言いながら頷いた。会話を交わしていたうちに、二人はもうオペ室の前にきた。

手術着に着替えた奈央は、皐月がまだいたので、聞いた。

「まだ何かあるのか」

「いいえ、そんな大したことでは、ただ、その......」

皐月が何かを言おうとしたが、躊躇った。

「直接言え」

そう言って、奈央は彼女のほうを見た。

皐月はこれで、腹
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status