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第91章 金で計るのもではない、縁で計るもんだ

奈央と小舟の二人の雑談に入る余地がなくても、皐月は全然頭に来なかった。彼女はただひたすら側で二人の話を聞いていた。

暫くして、店員は小舟に言われた通り、あるものをとってきて、奈央の渡した。

「これは入荷したばかりの極品の筆だ。宇野家のジジイはそういうのが一番気に入っている」

小舟は笑いながら言った。

奈央も頷いた。彼女の知る限り、あらゆるものの中では、文房四宝が一番のお気に入りなのだ。

以前たまに大旦那様に一緒にご飯を食べようかと声をかけれて、宇野邸に行ったたび、彼女はきっとこの店をよって、何か手土産を買って行ったのだ。大旦那様は毎回毎回喜んでくれた。

奈央は筆を皐月に渡したついでに言った。

「これにしようか、大旦那様はきっと喜んでくれるはず」

「はい」

奈央の決まったことには、皐月はなんの疑いもしなかった。

「おいくらですか」

皐月は反射的に聞いた。

小舟はニコニコしながら皐月のことを見つめていた。やがてに彼女を揶揄った。

「うちのものは従来金銭でその価値を計るものじゃない。縁で計るものだ」

「はっ?縁とおっしゃると?」

皐月は完全にちんぷんかんぷんだった。

「二百三十万円だよ」

小舟は意地悪そうにそう答えた。

皐月はさらにピンと来なくなった。彼女の顔には疑問マークが出ていた。

奈央はついに我慢できなくて笑い出してしまった。何かと小舟をせめていたかのように言った。

「小舟おじさん、変にからかうなよ」

「嬢さんの反応はあんまりにも面白いから、つい」

小舟まで我慢できずに笑った。

皐月のほうだが、彼女は未だに状況に追いつけなくて、ですから......いくらなんだよと気を揉んでいた。

彼女の悩みことを読み取ったかのように、奈央は声をかけた。

「ほら、持っていくといい。勘定のことは私がなんとかする。私を免じて、小舟おじさんはきっと割引をしてくれる」

「いいえ......」

皐月はすぐ遠慮しようとした。

「私もちょうどここで買い物をするつもりだし。それはおまけってわけよ」

一足早く口を開いた奈央は、そう言って小舟のほうを見た。

「どう、小舟おじさん、これでいいよね?」

「それは、奈央嬢の買い物の金額次第だが」

今日はきっと大儲けすると分かって、小舟の笑顔はさらに明るくなった。

「ここで待っててね、皐月」

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