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第57話

二人はついにキスをした。

ロングショットからバストショット、そしてクローズアップ。

クローズアップのシーン、俊介の舌が礼子の口に入り込んで......

礼子の体が少し震えて、拳がさらに力を込めたが、押しのけなかった。

そして、「カット」を聞いた。

礼子は俊介を押しのけた。

もちろん、礼子が何を怒っているかを彼は知っていた。彼も自然にそうしただけだった。

礼子が綺麗だけでなく、唇も柔らかくて彼がやむを得なくなった。

監督に止められなかったら、礼子に押しのけられなかったら、彼はずっとキスしていくだろう。

礼子が向きを変えて離れた。

合格したかどうかを気にしなかった。

俊介が追いついて言った。「礼子」

礼子が振り返って彼を冷たく見つめた。

「ごめん、さっき......」俊介がお詫びをした。歯を食いしばって続けて言った。「シーンを検討した時にもっと深入りして、そうするといい効果が出るし、二人がもっと早くキャラになり切ることができると監督に言われた」

「舌を使えと雄一に言われたの?」礼子が冷笑した。

この瞬間、礼子の気分がさらに悪くなったと俊介が突然気づいた。

先ほどは怒るだけだったが、今は恨みに変わったようだ。

彼女の目がこの瞬間真っ赤となった。

「監督も効果のためだ」俊介が黙認した。

「ちぇっ」礼子が笑った。

さっきキスシーンを削除すると言って、すぐヒーローにセクハラをさせるなんて。

早く雄一の偽りに慣れるべきだった。

助手を連れて休憩室に戻って、化粧を落とし始めた。

真弓はこの時、外の車で礼子を待っていた。先ほどのキスシーンも見ていた。勿論俊介がわざとした行為も目に見えた。錯覚かどうか分からないが、カメラの前の雄一の顔色が暗くなったように見えた。

「お待たせしました」礼子が車に乗った。

「とんでもないです。今日は元々暇なんですよ」真弓が丁寧に言った。

「車を出して」真弓が運転手に目的地へ向かってもらった。

レストランのビップルームに入って、礼子が帽子、マスクとサングラスを外した。

座ったばかりにドアが開けられた。

「千尋」礼子が叫び出した。

千尋が入って、馴染みのない真弓を見かけた。

「こっちは鈴木真弓です。兄さん......」礼子が少し止まって言い続けた。「タレントの打ち合わせで来たの」

「いつからこんな
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