第14話

「そんなに悲しまないでよ、ほら、私のチョコあげる！外国からの輸入チョコレートなんだよ。すごく美味しいんだから。お母さんが虫歯になるからって少ししかくれなかったの。まだ食べてないんだよ」

彼女はそっとそのチョコレートを男の子の手に押し込んだ。

男の子は鼻をすんとすすり、ようやく顔を上げた。

小さな柚木は彼の顔をしっかりと見た。まだ幼い彼女でも、かっこいい顔がどういうものかは分かる。

この男の子はとてもかっこいい。隣のクラスの「彼氏になりたい」と言って追いかけてくる太っちょなんかより、ずっと素敵だった。

しかし、その体は痩せ細っており、栄養不良のように見え、まるで豆の芽のようだった。

小さな柚木は笑顔を浮かべて彼に手を差し伸べ、立たせようとした。

男の子は少し躊躇しながら手を伸ばしかけたが、女の子が何かを聞きつけたように、急いで返事をして走り出した。

彼女はもう一度ポケットを探り、残っていた3つのチョコレートをすべて男の子の手に押し込んだ。

「私の名前は柚木！柚の木の柚に、木だけの『木』！また遊びに来てね！もう行かないと、バイバイ！」

女の子は夕日に逆らうように走り去っていき、舞い上がるスカートと髪が、男の子の心臓をドキドキと高鳴らせた。

この光景は藤田浩介の記憶に刻まれ、その後、再び柚木を目にしたとき、彼は一瞬で彼女を見分けることができた。

ただ、その時、少女の隣には別の誰かが立っていて、二人はまるでお似合いのカップルのように見えた。それが彼の心を深く刺した。

家に帰ると、藤田は大切にしていたその時のキャンディーの包み紙を箱にしまい、長年の想いと共に封印した。

それ以来、彼は影のように生きていた。

いつも柚木を気にかけていたが、彼女に近づく勇気はなかった。そして、ついに彼女が亡くなったという知らせが届いた。

私は夢の中で、彼が火葬を待っている間、崩れるように身を丸め、キャンディーの包み紙の一つひとつのシワを丁寧になぞっている姿を見た。

優しく触れるその間、涙がアルミ箔に落ちて、サラサラと音を立てていた。

彼は歯を食いしばり、嗚咽と啜り泣きを必死に堪えていた。

その端正な顔は真っ赤になり、体が小刻みに震えていた。

温かさが私の目元を濡らし、激しい息遣いとともに目を覚ました。

目の前には、藤田浩介の優しさが溢れる眼差しがあった。