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第9話

坂本笙子は、林拓也の姿を見ると、すぐに大声で叫び始めた。

「拓也くん、助けて!」

そう言いながらも、必死に身をよじり、羽織っていた上着がずり落ちて、だぶだぶの病衣から白い肌がちらついた。

私にはっきりと見えた。彼女を掴んでいた金髪の男が唾を飲み込み、手を彼女の服の中に忍び込ませようとしている様子を。

坂本笙子は驚きの声を上げ、涙を浮かべながらその男に哀願の視線を向けた。

その様子を見た林拓也は、すぐさま田中の前にひざまずいて懇願し始めた。

「田中さん、どうか彼女を放してやってください!隣にいる女は香川家の令嬢ですよ!

彼女なら、この借金を返す力があります!もし無理なら、彼女を人質にして香川家の母親に金を出させましょう。

いくらでもお金が出てきますよ!」

私は体が冷え切り、林拓也が借金を抱えて高利貸しに追い詰められていることを悟った。

彼自身が返せないどころか、私まで巻き込もうとするなんて、なんて卑劣な男なのだ。

田中は満足げに頷き、金髪の男に向かって坂本笙子を解放するよう手を振った。

坂本笙子はすぐに林拓也の胸に飛び込み、泣きながらしがみついた。

私はこっそりポケットに手を伸ばしたが、空っぽだった。

その瞬間、後ろにいた男が私の手を掴み、動けなくした。

「探しても無駄だ。お前の携帯はもう捨てた。

連絡を取ろうなんて大胆なことを考えたな」

その手は私の手首をしっかり押さえつけ、不快な指先が手の甲をなぞり回った。その気味悪さに、鳥肌が立った。

「何か証拠を香川さんに見せてやるか、何がいいと思う?」

田中は軍用ナイフを持ち、ゆっくりと私に近づいてきた。光の反射で刃が恐ろしいほど白く光っていた。

その時、坂本笙子が声を上げた。

「田中さん、急がなくても大丈夫ですよ。この女、結構見た目も悪くないし、気に入ったなら楽しんでみたらどうですか?」

私はその言葉に激怒し、坂本笙子を睨みつけた。今すぐにでも彼女を引き裂いてやりたいほどの怒りがこみ上げてきた。

田中は一瞬驚いた様子だったが、すぐにニヤリと笑みを浮かべた。

「そうだな、でも俺は兄弟たちを裏切らない。佐藤、お前が欲しいものは何でも取れ」

その言葉を聞くと、金髪の男は興奮して林拓也を蹴り飛ばし、坂本笙子の服を引き裂こうとした。

彼女は悲鳴を上げ、必死に助けを求めたが、誰も彼女
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