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第10話

坂本笙子が投げかけてきた憎しみを帯びた視線を受け止めながら、私は一種の高揚感に満たされた。

隣では、藤田浩介が黙ったまま、私の体にある傷を確認していた。

私は彼の口元を指で軽く突きながら聞いた。

「どうしたの? 驚いた?」

しかし、彼は何も言わずに、ただ私をしっかりと抱きしめた。

その力強さはまるで私を骨の中にまで閉じ込めてしまうかのようだった。

首元に感じる温かく湿った感触に、私は一瞬体が固まった。

そして、彼を子供をあやすように、優しく背中を軽く叩きながら言った。

「次は、こんな危険なこと一人でやらないって約束して。あの男に捕まった君を見た時、僕の心臓は止まりそうだったんだよ」

彼の声はまるで大きな悲しみに打ちひしがれたかのように震えていた。

「ちゃんと対策はしておいたでしょ」

私は改造したネックレスを彼の目の前で軽く振って見せた。

このネックレスには小型のGPSが内蔵されていて、携帯がなくても藤田浩介が私の居場所を正確に把握できるようにしていた。

彼はそのネックレスをゆっくりと自分のポケットにしまい、少し拗ねたように言った。

「次からは、それを持たなくていい。代わりに僕を連れて行け」

その言葉に笑いがこみ上げ、彼の真剣な顔を見てすぐに頷いた。

警察の事情聴取に協力した後、私は自分のマンションに戻った。

しかし、藤田浩介は私を一人にはしてくれず、シャワーを浴びる時もバスルームの外で見張っているほどだった。

準備が整った私は、藤田浩介に事前に準備してもらっていた資料を手にし、香川家の旧邸宅へと向かった。

家の中で母を探し回っていると、メイドさんが言った。「奥様は少し前に外出されましたよ」

私は仕方なく階段を下りようとしたが、書斎の前を通りかかった時に中から物音が聞こえた。

メイドは少し焦った様子で続けた。

「お嬢様、旦那様はもうお戻りです。ただ、今お客様と話をしているので、少し待たれたほうがいいかと……」

そのメイドの落ち着かない態度を見て、私の予感が確信へと変わった。

私は迷わず書斎の扉を開け放ち、藤田浩介には外で待機してもらった。

その「お客様」とは、坂本笙子と、彼女に似たもう一人の女性だった。

その瞬間、これまで頭の中で繋がらなかったピースが全てはまり込んだ。

坂本笙子が私を嫌う理由、そして父香川正治が林
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