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おバカで甘い私が覚醒して闇堕ちした
おバカで甘い私が覚醒して闇堕ちした
著者: ショウモク・ユウ

第1話

目の前にいる坂本笙子は、今も記憶の中の高慢な姿そのままだった。

彼女の服は色褪せていたが、よく手入れされて清潔だった。

強情な表情は、まるで一輪の高嶺の花のように見えた。

その時、彼女は小さな顔をそっぽに向けていた。

紹介人はその様子に気づき、緊張して汗を拭いながら、こっそりと彼女の袖を引っ張った。

すると、彼女はやっとゆっくりと顔を戻し、真剣な表情で言った。

「たとえあなたが私を援助することを決めたとしても、私があなたにへつらう義務はないわ」

彼女の正論ぶりに、私は思わず笑い出しそうになった。

しかし、紹介人が求めていたのは、彼女が私に一礼して感謝の意を示すことだけだった。

それが彼女にとってそんなに屈辱的なことなのか?

なら、前世で私が経験したあれこれの出来事は、一体何だったのかしら?

私はゆっくりと彼女に歩み寄り、彼女の顎を軽く持ち上げて静かに言った。

「そんなに誇り高いなら、私の援助なんて受けなければいいじゃない」

彼女はその言葉を聞くと、目を見開き、小さな顔は真っ赤になった。

まだ何も言い返す前に、聞き覚えのある男性の声が割り込んできた。

「柚木、そんな口調はやめてくれ!」

私は急いで駆け寄ってきた林拓也を見上げ、怒りと憎しみが同時に湧き上がってきた。

今の林拓也は、まだ私に頭を下げ、私の恩恵を受けるただの学生だった。だから、彼は空気を読んで私の機嫌を伺う。

彼は私の顔色が悪いのを見て、媚びるように私を抱きしめた。

「柚木、そんなに機嫌を悪くしないでくれよ。笙子はもともとそういう性格なんだ。前にも話しただろう?」

彼の気味悪さに吐き気がして、私は彼を突き飛ばし、そのまま彼の頬を平手打ちした。

彼は叩かれて顔を横に向け、驚いた表情を浮かべた。

彼の目に一瞬陰りが走ったが、すぐに感情を抑え、平然とした様子を装った。

「柚木、また嫉妬しているのか?誤解しないでくれよ。笙子はただの友達なんだ」

いつもなら、彼がこうして適当に言い訳をするだけで、私はまたすぐに信じてしまい、彼のために何でもしてしまっていた。

どうしようもなく、私は典型的な恋愛に盲目な馬鹿だったのだ。

でも今はどうだろう?彼はまだ私を騙せると思っているのかしら。

私は眉を上げ、すぐに坂本笙子の手首を掴んだ。

その細い手首には、高級ブランドの華やかなブレスレットが巻かれていた。一目見ただけで、笙子が手に入れられるものではないとわかった。

私は坂本笙子を林拓也の前に引き出した。

「林拓也、覚えている?このブレスレット、前にショッピングモールで私が気に入ったものだよね

コンテストの奨励金が手に入ったら買ってくれるって言ってたのに、どうして今は彼女の手にあるの?

これがあなたの言う友達ってことね」

林拓也は驚き、口ごもりながら言った。

「いや、笙子の誕生日が近いからさ……彼女がこのブレスレットを気に入っていたんだよ」

前世でも、林拓也が坂本笙子を支援しているのを発見したとき、彼は同じ言い訳を使っていた。

言い回しすら変えず、いつも「笙子が好きだから」「笙子が欲しいから」「笙子が困っているから」と言い訳していた。

それなのに、私に送られるものといえば、100円ショップの安物か、使い道のない手作りの置物ばかりだった。

彼は「気持ちがこもっていることが一番大事なんだ」と言っていたが。

私は思い出を振り払い、笑顔でこの裏切り者たちを見つめた。

そして、坂本笙子のブレスレットを無理やり引きちぎり、それをダイニングテーブル横のゴミ箱に投げ捨てた。

「林拓也、私のお金で他の女を喜ばせるなんて、あなたもいい度胸ね」

「残念だけど、そのお金、私はゴミ箱に捨てる方がマシよ」

「これは拓也がコンテストの賞金で買ってくれたものなのよ!なんであなたが捨てるのよ!」

坂本笙子の顔色が変わり、泣きながらゴミ箱を漁り始めた。

私は思わず吹き出してしまった。

「本気であの役立たずが奨励金を取れると思っているの?お姉さんって言ってるけど、このお金、彼が私からかすめ取ったものよ」

一方、林拓也はその言葉を聞いて顔を曇らせた。

私はゴミ箱を足でひっくり返し、悠々と椅子に座った。

坂本笙子は黙って立ち上がった。

近くにいた紹介人は慌ててウェイターを呼び、片付けさせた。

私は紹介人をつつき、「この子はそんなに誇り高いんだから、わざわざ支援する必要なんてないわね。支援名簿から外してちょうだい」

紹介人は慎重に名簿を持ってきて私の前に差し出した。

「香川さん、それでは別の人を選びますか?」

私はリストを適当に押し払い、片付けをしていたウェイターを指差した。

「彼にしなさい」

藤田浩介は、私が突然彼に支援を提案するとは思わず、その場で固まっていた。

そうだろう、大学時代、私は彼と全く接点がなかったのだから。

でも、10年前にアルバイトで苦労していた青年が、10年後にはビジネス界で名を馳せるテクノロジーの新星になるなんて、誰が想像できただろう?

坂本笙子のような恩知らずを支援するよりも、藤田浩介を支援する方ははるかに価値がある。

坂本笙子は、私が本当に言った通りに行動するとは思わなかったのか、抗議した。

「あなたは前に約束してくれたじゃない!どうして今さら約束を破るのよ!」

私はネイルを楽しみながら、彼女に視線すら向けなかった。

「それは、この香川家の金だからよ。私が街中で撒き散らそうが、あなたに関係ないわ」

「仕方ないの、こんなにお金持ちだから」

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