第12話

坂本笙子は、しばらくショックを受けたようにその場に立ち尽くしていた。

突然、何の前触れもなく鑑定書を破り捨て、泣きながら香川正治の胸に飛び込んだ。

「お父さん、私はあなたの子よ！ 外野の言うことなんか信じないで！」

しかし、坂本笙子は気づいていなかった。隣にいた女性の青ざめた顔と、その手が震えていることに。

私は再びレコーダーをテーブルの上に置いた。女性の驚きと疑念が入り混じった目の前で、再生ボタンを押す。

「笙子が私の子だって言うの？」

「そうよ。私たちが別れた後すぐに妊娠したの。香川正治に気づかれないように、どれだけ苦労したか……」

「私は笙子を父親のいない子にはしたくなかった。でも、香川正治にはもう一人子供がいる。だから、笙子に全力を注いでくれるなんて期待できない」

「じゃあ、どうするつもり？」

「私は笙子を連れて香川正治からたっぷり金を巻き上げ、その後で海外に移住して、二人で楽しく暮らすのよ」

レコーダーに流れる女性の声は、まぎれもなく坂本笙子の母親の声だった。

香川正治は激しく息を切らし、胸を押さえながら震える指で彼女を指した。

彼女が逃げ出そうとした瞬間、彼はよろめきながら飛びかかり、

女性を押し倒し、首を締め上げた。

彼の手には力が込められ、女性は声を発することができなくなり、目が白目を剥き始めた。

坂本笙子は泣きながら香川正治を引き離そうとしたが、彼は彼女を反射的に押しのけた。

その勢いで坂本笙子は床に倒れ込み、額を机の角にぶつけて血を流し始めた。

「このクソ女！ 俺に浮気して、挙げ句に偽の娘で金を騙し取ろうだと？ 今日こそ殺してやる！」

女性はまるでまな板の上の魚のように痙攣し、だんだんと力なくもがくようになっていった。

私は藤田浩介と目を合わせ、一人は警察に通報し、もう一人は香川正治を引き離す準備をした。

もしこのまま香川正治が人を殺してしまったら、香川家にも大きな問題が降りかかってくる。

しかし、藤田浩介が香川正治に向かって進んでいる最中、突然の黒い影が素早く駆け込んできた。

坂本笙子はいつの間にかナイフを手にしていて、それを香川正治の体に力強く突き刺したのだ。

その場の全員が驚きで凍りつき、一瞬、誰もが動けなくなった。

彼女は機械的に動作を繰り返し、ナイフを刺しては引き抜き、溢れる血で彼女自身を