由佳は肘をテーブルに乗せ、両手で頬を支えながら、太一に感心した様子で微笑みかけた。「正直言って、私はあなたみたいな人が好きなんです!」隣の個室からまた何か音が聞こえたが、由佳は気にせず、ため息をついて続けた。「私は家庭の事情で、性格がどうしても慎重で抑制的なんです。だから、あなたみたいに何でもやりたいことを自由にできる人が本当にうらやましい。世間の目なんか気にせず、思い立ったらすぐ行動できる人、自由のためにすべてを捨てられる覚悟がある人…そういうところが、私にはないんですよ」由佳は一口水を飲み、さらに続けた。「それに、あなたは正義感も強いし、私の財布を取り戻してくれただけでなく、他の女の子に迷惑をかけないようにしている。普通の人なら、この顔を使ってどこかで浮気してるかもしれないのに」「そんな風に買いかぶらないでください」太一は由佳の真剣な表情を見て、少し表情が固くなった。彼女、まさか本気で僕のことが好きなんじゃ……?いや、そんなはずはない。太一は背中がますます冷たくなっていったのを感じた。「私、本当にそう思ってるんです」太一は何も言えずにいたが、ちょうどその時、店員が料理を運んできたので、彼は内心ホッとした。店員から料理を受け取り、テーブルに並べながら太一は笑みを浮かべた。「話ばかりしてないで、さあ、食べましょう」「うん」由佳は頷き、ふと尋ねた。「でも、どうしてこの店にしたの?しかも、わざわざ個室を予約するなんて」太一は理由を適当に考えようとしていたが、由佳が眉を上げ、目をきらめかせてこう言った。「私たちの邪魔をさせたくなかった?」その言葉には、どこか妙な響きがあった。まるで、二人がデートをしているような感じがした。その時、隣の個室からまた耳障りな音が聞こえてきた。ナイフで皿を切るような、ギシギシという不快な音だった。太一はその音を聞きながら、清次の険しい表情が頭に浮かんだ。事態が自分の予想を超えて進んでいることに、彼は驚いていた。由佳はふと昔のことを思い出したように、「そういえば、山口家に行ったばかりの頃のことなんだけど…」と話し始めた。「ある朝、叔母さんが突然洋食の朝ごはんを作ってくれたんです。でも、私はその時、新しい食事が楽しみだとは思わなかった。ただ、ナイフとフォークをどう使えばいいのか心配
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