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第345話

それで、由佳は太一との食事の時間を夜に決めた。

太一が「レストランは僕が選ぶ」と言ったとき、由佳はまた妙な感覚を覚えた。

しかし、彼女はそれを拒まず、太一が決めてから知らせてくれるのを待つことにした。

翌朝7時半、由佳たち三人は指定された港に到着した。

その時点で、すでに多くの人が港に集まっており、彼らも観光ツアーでクジラウォッチングに参加するために集まったと思われた。その中にはアジア人の姿もちらほらと見受けられた。

彼女たちが予約していたのは双胴船で、ガイドは白人で、ツアー内のコミュニケーションは全て英語で行われた。

7時40分に乗船が始まり、8時には出航。船には30人以上が乗り込んでいた。

船が海面を切り裂いて進むと、白い波が両側に広がり、徐々に港が遠ざかっていった。

由佳はデッキに立ち、顔に当たる海風を感じていた。その風には独特な潮の香りが混ざっていた。

振り返って、港は次第に遠ざかり、やがてぼんやりと見えなくなって消えていった。

周りを見渡すと、青々と広がる海が一面に広がり、その先には雪山がうっすらと見え、空と溶け合うかのように続いていた。

クジラが現れる海域までまだ距離があったので、由佳は寒さに耐えきれず、休憩室へ向かった。

船には小さな休憩室があり、すでに10人ほどが中にいた。

残りの10人ほどは外にとどまり、寒さにもかかわらず楽しんでいた。

しばらく時間が経ち、クジラが現れる海域に到着した頃、ガイドが由佳に「そろそろ出て来て」と声をかけ、彼女は再びデッキに出た。

その時には港はすでに影も形もなく、船は広大な海の上にぽつんと浮かんでおり、四方を見渡しても果てしない海しかなかった。

由佳はその広大さに思わず息をのんだ。大自然の雄大さと人間の小ささを実感せざるを得なかった。

クジラウォッチングもオーロラと同様に、運が関係するアクティビティだった。

観光客たちは目を大きく見開き、集中して海面をじっくりと見渡していた。

しかし、海域をほとんど通過しても、クジラは一向に姿を見せなかった。

船は何時間も海を巡り、やがて昼時になった。

ツアーには昼食も含まれており、食事は豪華だったが、観光客たちはどこか物足りなさを感じている様子だった。

その時、ガイドが大声で英語で叫んだ。「見て!南東の方向だ!」

その声が響いた瞬間、双胴
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