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第353話

  高村さんはようやく清次が由佳の化粧を落としていることに気づいた。

 「由佳ちゃん、どうしちゃったの?まさか、彼女に薬を盛ったんじゃないでしょうね?」高村さんは真剣な顔で疑った。

 清次は冷たい目で彼女を一瞥し、その表情に高村さんは一瞬怯んだ。

 この男はあまりにも威圧感があった。

しかし、友達のために、彼女は勇気を振り絞って言った。「由佳ちゃんはもう山口さんと離婚したのよ。もし彼女に悪いことをしたら、命をかけてでも許さないわ」

 その言葉に、清次の顔色が少し和らいだ。

 高村さんは、いつも由佳に男を紹介しようとして面倒な奴だが、由佳に対しては本当に心から大切に思っている。

 由佳のために、今日は見逃してやろう。

 「少し酒を飲んで、眠っているだけだ」清次は珍しく説明した。

 高村さんは意外そうにしたが、少しほっとした。

 清次はタオルを置いて、浴室へ向かった。

 高村さんはベッドに近づき、由佳の額を触り、呼吸を確認して安心したが、それでも浴室の方を警戒し続けた。

 清次が手ぶらで浴室から出てくると、高村さんはすかさず尋ねた。「由佳ちゃんは今夜、森くんと食事に行くはずじゃなかった?なんで山口さんと一緒にいるの?」

 清次は答えず、ドアに向かって歩き出した。「彼女をちゃんと世話してよ」

 「えっ……」

 ドアを開けた瞬間、清次はふと立ち止まり、わずかに振り返って高村さんを見た。「もう携帯であの写真を見せるな。」

 「私の勝手でしょ?」

 「それとも、携帯をハッキングさせるか、壊してやるか。どっちがいい?」

 「えっ……」

 高村さんは黙ってしまった。

 それならもう由佳に見せるのはやめよう。携帯を守る方が大事だ。それに、せっかく集めた写真が消えるのはもったいないし。

 しかも、写真だけじゃなくて、他にも大事なデータが入ってる。もしそれが流出したら、彼女の人生は終わりだ。

 清次が去った後、高村さんは由佳に異常がないことを確認し、自分の部屋に戻った。

 翌朝8時、由佳が目を覚ますと、ベッドサイドに高村さんの置き手紙があった。「ねえ、昨夜なんで山口さんと一緒にいたのか、起きたらちゃんと説明してよ」

 由佳は高村さんにメッセージを送った。「高村ちゃん、先に山口さんを空港まで送ってくる。その後で説明するね」

 「ちゃんと説
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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
さりげなく?探りを入れてるね!
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