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第358話

  夕方、由佳は目を覚まし、時差ボケもほぼ治すことができたようだった。高村さんを呼んで一緒にレストランで夕食を取ることにした。

 夕食後、高村さんが外を少し歩こうと提案した。

 周りには旅行客がたくさんいて、皆楽しそうに写真を撮っていた。

 由佳と高村さんは桟橋のそばに立ち、心地よい海風が顔に吹きつける。涼しくて爽快な気分だった。

 街の灯りが海面に映り、波に揺れる光が金色に輝いて、とても美しかった。

 二人はそこで何枚か写真を撮ったが、由佳は背後に誰かの視線を感じていた。

 しかし、周囲を見回しても誰も見当たらなかった。

 その後、二人はシドニー・オペラハウスの周りを一周し、ホテルに戻った。

 吉村総峰は二日後に到着予定で、それまでは由佳と高村さんだけだった。

 三日目、由佳と高村さんはクイーン・ビクトリア・ビルディングに向かった。

 クイーン・ビクトリア・ビルディングはシドニー最大のショッピングセンターで、歴史ある建物だ。

 ガラスのドーム天井や階段など、クラシックな雰囲気を醸し出していて、観光スポットとしても有名である。

 中には多くの飲食店、カフェ、レストランがあり、地元のブランドに加え、たくさんの国際的なブランドショップも揃っていた。

 由佳は観光だけでなく、吉村総峰への贈り物を買うという目的もあった。

 ついでにお土産も選ぼうとしていたが、まだ吉村総峰に何を贈るか決めかねていた。

 高村さんは「急がなくてもいいよ。ゆっくり見て回っていれば、ぴったりの物が見つかるかも」と言った。

 ある店で、由佳は一つの男性用腕時計に目を留めた。控えめながらも高級感がある。

 販売員はその時計をテーブルに置いて、美しさをアピールしながら強く勧めてきた。

 「この時計、吉村くんに贈るのどう思う?」

 「悪くないけど、どうして彼にプレゼントを渡す必要があるの?」

 「お返しだし、渡さなきゃね」

 由佳が販売員に購入手続きを頼もうとしたその時、横から威圧的な声が聞こえてきた。「その時計ちょうだい!」

 耳慣れた声に振り返ると、やはり飛行機で遭遇したあの女性だった。

 彼女も二人を見て気づいたようで、軽蔑の目で見下しながら言った。

 「また、お前たちか。貧乏人のくせに、こんな場所で物を買うなんて。お金払えるの? 無理しちゃって、恥を
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