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第364話

  由佳は足を止め、「ここで見送るね。あちらがチェックインカウンターだから、これ以上は行かないよ」と言った。

 吉村総峰は時計を一瞥し、名残惜しそうに、「わかった。君たちは帰って。旅行に遅れたらいけないから。帰国したらまた会おう」と答えた。

 由佳が何か言おうとしたその時、背後から大声が響いた。「吉村くん、そこにいる!」

 声が聞こえると同時に、無数の足音がこちらに向かって駆け寄ってきた。

 由佳は振り向く暇もなく、人混みに押しつぶされてしまった。人々は次々と彼女を押しのけ、由佳は混乱してしまった。

 人混みはさらに激しくなり、突然の勢いで押され、由佳は床に倒れ、驚きの声が喧騒に飲み込まれてしまった。

 すぐに誰かが彼女の脚を踏んでいった。

 足が彼女の周りを通り過ぎ、誰かが不意に彼女の体に踏みつけたり、蹴ったりしていた。

 由佳の叫び声は聞こえず、誰も気に留めていなかった。

 立ち上がろうとしたとき、背中に足を踏まれてしまった。

 高いヒールが耳元で落ち、頭の上に落ちるところだった。

 彼女は両手で頭を抱え、身を守りながら、人波が過ぎるのを待った。

 底の空気が薄く、由佳は呼吸が困難で、頭がふらふらしていた。

 さらに頭を蹴られ、蹴った人がほとんど転びそうになりながら、「この人は病気か?どうして地面に横たわっているんだ!」と怒鳴った。

 彼女の体中が痛み、目の前に星が見えるようだった。

 そのとき、突然、温かく広い腕に包まれた。

 彼女は空中に持ち上げられ、人混みから引き離された。

 この瞬間、由佳の心はとても安心した。

 自分がまだ生きていることに驚き、鼻に満ちる熟悉な香りに、由佳は自分の錯覚だと思った。

 耳元で無視できない声が聞こえた。「誰かが怪我をしている!道を空けて!」

 その声がとても耳慣れたもので、由佳が顔を上げると、そこには清次の厳しい顔があった。

 彼の顔の半分が太陽の下で輝き、天使のように光を逆らって彼女を泥から救い出していた。

 その瞬間、由佳の心には言葉では表現できない感情がわき上がった。

 彼女はぼんやりと、「清次?」と呟いた。

 清次は由佳を一瞥し、冷たい表情で、「どうした?私を見て失望したのか?」と聞いた。

 「どうしてここにいるの?私についてきてるの?」と由佳は疑問に思い、顔色を曇ら
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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
いや!確実に清次が吉村くんを早く帰すように仕向けただろ!! てことはこの災難もあんたのせいやろー(°σ_ °)ハナクソ
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