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第348話

隣室で何かが床に落ち、粉々になった。すぐに店員が駆けつけて片付けを始めた。

太一はもう清次の感情に気を使っている余裕がなくなり、顔が固まってしまった。

由佳が自分が好きだって?!

一体どうして?!

彼は膝に手を置き、深く息を吸い、心の中の混乱を抑えようとしながら、複雑な表情で聞いた。「由佳、本気なのか?」

「もちろんよ。じゃなきゃ、どうして今日一人で来たと思うの?」由佳は微笑み、長い睫毛をぱちぱちと瞬かせた。

太一は息が詰まりそうになった。「由佳、少し慎重に考えたほうがいいと思うよ。僕が何でそんなに君を惹きつけたのか分からないけど、とにかく……」

「私が一度離婚してるから嫌なの?」由佳が彼の言葉を遮った。

「いや、そうじゃない」

「じゃあ心配しないで。清次は何もできないんだから」

太一は驚愕して口をぽかんと開けた。「信じられない?私も最初は信じられなかったわ。見た目は筋肉質でも、彼はまったく勃起しなくなるの。結婚してこの三年間、私は毎晩ひとりで寝てたわ」

太一の口がさらに開いた。

その一方で、隣室にいた清次は、怒りで体中の血が沸き立っていた。

まさか由佳が太一に惚れるなんて!

それだけじゃなく、自分のことを太一の前でけなして、嘘までついてる?由佳の度胸はどれほど大きくなったんだ?!

太一がまだ由佳の言葉の真偽を考えていると、彼の携帯電話が鳴り響いた。

ポケットから取り出して確認すると、案の定、清次からだった。

彼は今頃怒りで死にそうだろう。

だが、この電話はまさに救いの一手だった。さもなければ、太一はどう答えるべきか本当に分からなかった。

「ちょっと電話出てくる」

「うん、早く戻ってきてね」由佳は微笑んで彼を見つめた。

太一は背筋が寒くなりながら、立ち上がり、急いで外に出た。

彼の遠ざかる背中を見送りながら、由佳の表情から笑みが消え、彼女の目は冷静な光を帯び、前のスクリーンをじっと見つめていた。

由佳はスマホを取り出し、電話がかかってきたふりをし、会話を始めた。「もしもし、高村。今夜は多分戻らないと思う。心配しないで、太一はすごくかっこいいし、スタイルもいいから、私に損はないわ。日本に帰ってからまた話すわね。彼が無一文でも大丈夫。清次がくれた5000万の離婚金で、私が彼を養ってあげるわ。あなたのおかげで、ここで彼に出会え
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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
由佳ちゃん確信犯!!!ꉂꉂ(>ᗜ<*)
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