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第349話

由佳は腕を組み、一方の手で玉垂れを軽く払い、ゆっくりと数歩前に進み、清次を上から下まで見回した。「まさか、ここで出張中?偶然にも取引先とここで食事中だなんて言わないでよ?」

清次は唇を一瞬引き締め、「気づいていたんだな?」

ということは、由佳がさっき太一に言ったことは、わざとしたことだったのか?

「太一はあなたの友人?それに、この間ずっと私をつけているの?」

最初、由佳は太一に対して何かおかしいと思い、高村の言葉でその疑念は一度は消えた。しかし、空港で清次が現れたことで、再び不審を覚えた。

それもそのはず、その時の彼の様子は、どう見てもノルウェーに着いたばかりのようには見えなかった。

さらに、彼女に対する太一の反応も、好意を持っているようには感じられず、何かが噛み合わなかった。

「そうだ」清次は深く息を吸い、低い声で答えた。

彼はゆっくりと一歩前に進み、燃えるような視線で由佳を見つめた。「由佳、君なしでは生きていけない。けれど、僕が出て行ったら、君が嫌がるんじゃないかと怖かったんだ。それで、遠くから見守ることしかできなかった……」

そうか、彼女が何度か感じたあの視線は、すべて彼のものだったのだ。

由佳は目を伏せた。

清次は彼女を追ってこんな遠い国まで来たのに、表立って出てこず、ずっと影に潜んでいた。

もし昔なら、彼女は感動して涙を流していただろう。

だが今は、ただ彼の目的を疑うばかりだ。

仮に、彼の言葉が本当だとして、彼女を愛しているからだとしたら、それでも遅すぎた。

「清次、私たちはもう離婚したの。これからはお互い別々の人生を歩んで、干渉し合うべきじゃない。もうこんなことはやめて。意味がないわ」

「意味があるかどうかは君が決めることじゃない。君が僕と復縁したくないと言ったのは分かってる。僕は君の許しを望んでるわけじゃない。ただ、君が幸せそうにしている姿を毎日見られるなら、それで満足なんだ」

清次の言葉は、感情を込めて言われているが、どこまでが本心かは判断できなかった。

彼女は、この三年間、彼に騙されていたことがあるからこそ、今でも疑いの目で見てしまう。

かつて、彼からこんな言葉を聞きたかったと、どれだけ願っていたか。

しかし、今さらその望みがかなうなんて遅すぎる。

しかも、その言葉が、彼が歩美に何度も言った後で、ようやく自
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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
おい!この卑猥おとこーーー!!!笑笑笑
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