「もし私が来なかったら、今日の午後はどこに行くつもりだったの?」吉村総峰はサービス係から受け取ったサイドディッシュをテーブルの端に置いた。 「フェリーに乗るつもりよ。船の上から撮影したオペラハウスとハーバーブリッジがもっと綺麗だって聞いたわ」由佳は焼き魚の骨を取りながら口に運び、外はカリッと中はふんわりしていた。 「それならフェリーに乗ろう。由佳ちゃんに合わせるよ」吉村総峰は由佳のカップを見て、もう底が見えていたので、「まだスプライトが欲しい?僕が取りに行こうか?」と聞いた。 「うん」由佳はスープにエノキダケを二つ入れた。 「はい」吉村総峰はカップを由佳の前に置き、自分も席に着いた。 「ありがとう」 「ここ数日、シドニーで楽しんだでしょう?次はどこに行く予定なの?」 「実は明日メルボルンに行こうと思っていたんだけど、今日はシドニーに来たばかりで、ほとんど観光していないの……」 「大丈夫、以前仕事でシドニーに来たことがあって、こちらも遊んだことがあるから、明日メルボルンに直接行こう」と吉村総峰が言った。 「それならいいわ」 向かいのカフェで清次は、吉村総峰が由佳のそばに座り、時折飲み物を取りに行ったり、公の箸で料理を取り分けたりしているのを見て、腹が立ってしょうがなかった。 その席は本来、自分のものだったのに! 彼らは中華レストランから港まで歩くことに決めた。 吉村総峰は由佳と高村さんのバッグを自ら持つことにした。 途中でカフェに立ち寄り、入り口にはいくつかのサンシェードと丸い椅子が置かれていた。 吉村総峰は「ここで少し待っていてくれない?僕がコーヒーを奢るよ」と言った。 船の上で景色を楽しみながらコーヒーを飲むのは素敵なことだ。 高村さんは頷いて、由佳を連れて椅子に座った。「それじゃ、お手数をかけますが、アイスアメリカーノを一杯お願いします」 「私はラテを一杯、氷入りで」 「了解、ここで待っていて。僕が並んでくるよ」 吉村総峰はカフェに入り、女性用のバッグを二つ持って並んでいる姿を見た高村さんは、由佳に向かって「吉村くん、本当に優しいね」と笑いながら言った。 由佳は淡い笑みを浮かべて何も言わなかった。 この光景を清次は黒い顔で見つめ
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