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第370話

  「違うよ、雅人くんも絶対にあなたに気があるんだって。由佳ちゃん、見てよ、離婚してから、急にモテ期が爆発したんじゃない?」

由佳は額に手を当てた。「誰であれ、今はそういうことを考える余裕はないわ」

「そう…」高村さんはため息をついた。「もったいないわね」

「好きなら、付き合ってみたら?」

「いや、相手が狙ってるのは私じゃないのよ」

「もしかして、勘違いかもしれないわよ?」

「それはないわ。表向きは私たち二人を同じように扱ってるけど、話す時はいつも由佳ちゃんばかり見てるもの」

由佳:「……」

「そういえば、最近斎藤くんと連絡取ってるの?」

「そんなに取ってないわね」

斎藤颯太はよく連絡してくるが、由佳はあまり返信していない。斎藤颯太が同じ虹崎市の出身で、今後また会う可能性があるから連絡を完全に切っていないが、そうでなければもう削除していたかもしれない。

「見て、空にヘリコプター!」ある観光客が空を指さして驚いた声をあげた。

みんなが窓の外を見ると、遠くの空にヘリコプターが飛んでいるのが見えた。

ガイドが視線を戻して言った。「そんなに羨ましがらなくても大丈夫です。プリンストンのピーターボロ周辺では、皆さんもヘリコプターに乗ってザ・トゥエルブ・アポストルズを見学することができますよ」

ザ・トゥエルブ・アポストルズはグレートオーシャンロード、ひいてはビクトリア州全体の象徴的な景観で、観光客にはヘリコプターによる空からの見学が大きな魅力の一つとなっている。

彼らは黄昏の前にアポロベイに到着した。

今夜はそこでキャンプをする予定だ。

ガイドは彼らにテントを配り、張り方を教えた。

高村さんと由佳は一緒のテントを使うことになり、雅人が積極的に手伝いに来たが、由佳は「大丈夫よ、自分たちでできるから」と断った。

雅人はその場で気まずそうに笑い、由佳が自分を遠ざけようとしているのを感じた。

テントを張り終えると、ガイドは自由行動を許可した。

由佳と高村さんは近くの森を散策し、オトウェイ岬灯台を見に行った。

青い海辺に広がる山の頂上、緑豊かな草原の上に白い灯台が高くそびえ立ち、灯台へと続く小道の両脇には白い柵が立ち並び、まるで天国へと続く道のように清潔で美しかった。

由佳と高村さんは塔の頂上に登り、広大で雄大な海を見渡し、ビクトリア州の海の絶
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