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第373話

  雅人は一瞬で眠気が吹き飛んだ。

由佳をテントから連れ出したのは高村さんではなかったのか?

雅人は後悔した。どうしてあっさりと由佳を他人に連れ去らせてしまったのだ!

夜中に由佳のテントに忍び込んで連れ出したその人物は、どうせろくな考えをしていないに違いない。もしかすると、自分と同じような目的だったかもしれない。

自分が準備したことが、すべて他人の手助けをするためだけに終わってしまったのだ。

もし自分が由佳を引き留め、薬を盛ったのがその人物だと罪をなすりつければ、感動した由佳が自分のものになったかもしれないのに!

素晴らしい機会を逃した雅人は、すごく後悔した。

ガイドが開いたテントを覗くと、中はやはり空っぽだった。「携帯は持ってましたか?」

「いいえ!」

由佳の携帯はまだテントの中に置かれていた。

「林の中にトイレに行ったんじゃないですか?」とガイドが推測した。

運転手たちも集まり、一人の中年男性が「まずは落ち着いて。少し待ってみましょう。10分経っても戻らなければ、探しに行きましょう」と言って安心させようとした。

その時、雅人が近づいてきて、自分の考えを述べた。「携帯がここにあるなら、トイレに行って帰ってきたときに、テントを間違えたんじゃないでしょうか?」

由佳を連れ出した人物は、間違いなく旅行グループの一員だ。さっきこっそり人数を数えたところ、全員ここにいる。つまり、由佳はその人物のテントに隠されているに違いない。

ガイドは「じゃあ、みんなのテントを探してみよう。もしかしたら本当に間違って入ってしまったのかもしれない」と言った。

みんなはそれぞれのテントを見に行き、一巡したが、誰も由佳を見つけることはできなかった。

雅人は口を閉ざし、もう何も言えなくなった。

まさかその人物が由佳を林の中に隠しているのか?それとも、その人物は旅行グループのメンバーではなく、近くの町の住人や観光客なのか?

もう数分が経過しており、トイレに行っているならそろそろ戻ってくるはずだ。

高村さんは焦り、「どうしよう?人が急にいなくなるなんて!」と叫んだ。

「トイレに行って足を滑らせたんじゃないか?」と誰かが推測した。

ガイドはしばらく考えた後、「じゃあ、みんなは先に休んでいて。数人は私と一緒に林の中を探しに行こう」と提案した。

ガイドと運転手、そ
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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
意地汚い考えで犯罪まがい(てか犯罪)を犯したんだから、がっつり捕まって! てか清次、よくその場でボコボコにしなかったなー
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