昔日、清次はなぜ一部の人がそんなにタバコを好むのか理解できなかった。 今では、その理由が分かる。 一本のタバコが終わり、彼は吸い殻を消し、煙の匂いが完全に消えるまで冷たい風に当たってから部屋を出た。 由佳は下で彼を待っていた。 まるで、彼がすぐに降りてくることを知っていたかのようだった。 二人は一瞬目を合わせ、すぐにまた視線を逸らした。 言葉にはしなくても、彼の未練と、彼女の決意は互いに察していた。 「行こう」 「ええ」由佳は立ち上がり、清次の後ろについて車に乗り込んだ。 今回は、清次はスピードを落とすこともなく、順調に進んだ。 車はあっという間に市役所の駐車場に到着した。 ここに来るのは、二度目だった。 清次と由佳は、それぞれ車を降りて書類を手に取り、無言のまま肩を並べて歩いていった。その沈黙は妙に不気味だった。 建物に入ると、清次は突然由佳の手を握り、彼女が振り払う前に「これが最後だ」と言った。 過去三年間、彼には何度も彼女の手を握るチャンスがあった。あの風に飛ばされそうな凧の糸を掴む機会が。 しかし、結局彼はそれを逃してしまった。 凧は飛び去り、完全に彼の視界から消えてしまった。 彼の手は相変わらず温かく、彼女の手をすっぽり包んでいた。 由佳は、前回ここに来たときのことを思い出していた。目が霞んでいた自分を、彼もまた今と同じように手を引いて階段を上ってくれた。 あの時と何も変わらないように思えた。 でも、やはり何かが違っていた。 窓口で、清次と由佳は書類を提出した。 係員は名前に目を留め、顔を上げて何かを言いかけたが、すぐに何かに気づいたようにもう一度名前を確認した。 間違いないと確信し、清次と由佳の間を見比べて尋ねた。 「どうして離婚するんですか?」 清次と由佳が離婚するとは、清次が本当に浮気したのか?何か秘密を発見したかのように、係員は心の中の好奇心と興奮を必死に抑えていた。 「性格の不一致です」 「感情の破綻です」 二人は同時に答えた。 答えた後、彼らは再び目を合わせた。 「本当にいいんですか?結婚は一生のことです。もう一度よく考えてみませんか?」 「よく考えました」由佳は冷静に
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