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第302話

清次は手に握りしめた離婚証明書を強く握りしめ、関節が白く浮き上がっていた。

 一瞬、彼はそれを破り捨ててしまいたい衝動に駆られた。

 職員がすでに「無効」と印を押された結婚証明書を手に持って尋ねた。「これ、持って帰られますか?ご不要でしたら破棄しますが」

 「いります」清次は即座に受け取り、そのうちの一冊を由佳の手に押し付けた。

 由佳は一瞬驚いたものの、何も言わずにそれを離婚証明書と一緒にバッグにしまい、「行きましょう」と言った。

 「うん」

 帰りの車の中、由佳は窓を開け、冷たい風が顔に吹きつけ、骨まで凍るような寒さを感じた。

 彼女は右側のサイドミラーに映る自分の顔を見た。無表情だった。

 彼女の心は思っていたほど軽くはなく、むしろ重く感じた。

 微かな苦味と辛さが、ゆっくりと胸の奥に広がっていった。

 痛みがひどいわけではない。ただ、胸全体が抑えつけられるように苦しかった。

 由佳は目を大きく開け、清次に赤くなった目元を見られないようにした。

 そうだ。

 16歳から25歳まで、約10年間だ。たとえ犬を飼っていても、急にいなくなったら寂しく感じるものだ。ましてや人間ならなおさらだろう。

 彼は10年間も好きだった相手なのだ。

 彼女の暗く冷えた人生に差し込んだ一筋の太陽であり、彼女が追いかけていた存在だった。

 彼はすでに彼女の生活の一部となり、習慣のように溶け込んでいた。

 そんな彼を短期間で忘れるなんて、どうしてできるだろうか?

 ただ、長い年月をかけても、彼女は彼の心を温めることができなかった。

 彼女は十分に努力してきた。疲れ果てるほどに。もう彼を愛する力は残っていなかった。

 だから彼女は手放すことを決めたのだ。

 由佳は心の痛みを抑え、微笑みを浮かべた。

 さようなら、16歳の由佳。

 これからは、自分の過去と決別し、新しい生活を始めるのだ!

 「清くん」由佳は突然彼の名前を呼んだ。

 「うん?」清次はバックミラー越しに由佳の穏やかな笑顔を見た。

 彼は彼女の笑顔を見るのが好きだった。

 だが、この瞬間の彼女の笑顔は、彼にはあまりにも痛々しく映った。

彼女は完全に彼から解放され、総峰と一緒になれることが本当に嬉しいに違いないと彼は思った。

「この結婚生活には不満だったのでしょう。この三
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