松本里美はすでに到着していた。特に山田麻衣は、長いドレスにショールをまとい、優雅で品格のある姿を見せていた。彼女は松本隼人の腕に寄り添い、顔には満面の笑みを浮かべていた。何も知らない人が見れば、まるで自分の実の娘が婚約するかのように見えただろう。その笑顔が佐藤峻介にはまぶしすぎるほどだった。森本進が急いで答えた。「松本さんと奥様は早くからいらして、ゲストをお迎えするために準備されていました。松本さんのドレスに少し問題があり、昨夜は修復のために徹夜で作業していました。今朝は早くからメイクとドレスの試着に行っていますが、そろそろ到着するはずです」佐藤峻介は松本里美の性格をよく知っていた。今日は彼女がようやく手に入れた婚約の日であり、彼女は自慢したいがために早く到着するはずだった。しかし、もうこの時間なのに、まだ来ていないとはどういうことだろう?会場の設備は何度も調整され、あとは松本里美が到着して式を始めるのを待つばかりだった。空気には満開の花の香りが漂い、色とりどりのドレスを身にまとった人々が優雅に歩き回っていた。ある者は会話を楽しみ、また写真を撮っていた。子供たちは木の下を駆け回り、非常に和やかな光景が広がっていた。佐藤拓海も玲奈に抱かれながら、好奇心いっぱいに頭上の満開の桜の花びらを見上げていた。風がなくても、花びらはひらひらと舞い落ちていた。佐藤拓海はその花びらをつかもうと手を伸ばしたが、ちょうどその瞬間、花びらが彼の鼻先に落ちてきた。小さな彼はそのまま動かず、花びらが落ちないようにじっとしていた姿が、とても可愛らしく癒される光景だった。山田麻衣は辺りを見回したが、松本里美の姿は見えず、思わず松本隼人の腕を引き、「里美ちゃん、まだ来ていないのね?何かあったのかしら?」と聞いた「里美は生まれつき美にこだわる性格だからね。以前もドレスの小さな問題で返品させ、夜通しで修理をさせたんだ。今もそのことで苛立っているのかもしれない」松本隼人はため息をついた。「それじゃ困るわ。もうすぐ儀式が始まるのに、何も問題が起こらないようにしないと。電話してみるわ」山田麻衣はそう言ってその場を離れようとしたが、松本隼人が彼女の腕をつかんだ。「無理しないで。君は退院してまだ間もないし、ここ数日、里美ちゃんのことでずっと忙
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