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第0198話

綿は手元に目を落とし、「ああ、これは山田枝子が飛び降りようとしたところを助けたの」とつぶやいた。

腕の傷は大したことなかったが、少し皮が剥けていた。

思わず輝明の手の甲を思い出した。彼の方がずっとひどい傷を負っていた。

「いや、僕が言いたかったのは、君が車に乗るところを高杉が見ていたってことだよ」と司礼が付け加えた。

綿は一瞬驚いたが、「それがどうしたの?」と微笑んで司礼に問いかけた。

司礼は「本当にもう愛していないのか?」と疑問を投げかけた。

「愛してるかどうかなんて、もう関係ないことよ」と綿は腕を下ろし、車窓の外を見つめた。

愛していても、愛されなくても、どちらにしろ何も変わらなかった。そんなこと、もうどうでもいい。

「司礼——」と綿が車窓の外を指差した。

小さな噴水広場にはたくさんの人が集まっていた。

司礼は彼女の意図をすぐに理解した。

綿が車を降りようとしたとき、司礼に「帰りは気をつけてね」と促そうとしたが、彼も一緒に車を降りた。

「少し遊んでからタクシーで帰るよ」と綿が言った。

「一緒に行こう」と彼は柔らかな声で答えた。

「でも、叔父さんがまだ病院にいるんでしょ?」と綿は首を振った。

「父はもう大丈夫だ。後でまた病院に戻るよ」と彼は微笑みながら前へと歩き出した。

綿は一瞬驚いたが、すぐにその後を追った。

噴水の周りでは、子供たちが楽しそうに遊んでいた。夜も遅いのに、人々の笑顔が溢れていた。

一人の子供が綿にぶつかり、「ごめんなさい」と笑いながら去っていった。彼女の服は少し濡れてしまった。

綿はふと目を向けると、透明な風船の中に浮かぶ蝶のデザインが目に留まった。

司礼はその視線を追い、すぐにその風船を買って手渡した。

「ほら、お嬢ちゃん」と彼は優しく笑った。

綿の心が一瞬弾んだ。

お嬢ちゃん……

もし子供のままでいられたら、なんて。

綿は風船を持ち上げ、少し寂しげに言った。「ずっと子供のままでいられたらな。大人になりたくないよ」

「それもできるさ」と司礼は彼女を見つめ、優しい声で言った。

その瞬間、二人の視線が交わり、綿はその意図を少し理解した気がした。

その時、突然水がかかってきた。

子供たちが「きれいなお姉ちゃん、一緒に遊ぼうよ!」と笑いながら叫んでいた。

綿の思い出が一気に子供時代へと引き戻さ
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