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第0196話

綿は鋭い目をして、一気に駆け寄り、その男と一緒に山田枝子を引き上げようとした。

山田枝子の体は建物の縁にぶら下がり、「放して!」と泣き叫んでいた。

綿は彼女の左腕を、男は右腕を掴んでいたが、山田枝子は必死に左腕を振りほどこうとしていた。綿の手首には擦り傷ができ、血が滲み始めていたが、痛みを感じる暇はなかった。

彼女の頭にはただ一つの思いがあった——山田枝子を絶対に死なせてはならない。

その時、男がもう片方の手で綿の手首を支えた。

綿は驚いて顔を上げ、その男の顔を見た瞬間、息を呑んだ。

「何をぼーっとしてるんだ!早く手伝え!」彼は低く叫んだ。

綿は唇を微かに動かした。それが、輝明だった。

周りの人々が駆け寄り、輝明は綿の手をしっかりと握り、壁が彼の手の甲を擦るのも構わず、全力で山田枝子を引き上げようとした。

人々の助けで、ついに山田枝子を引き上げることができた。

山田枝子は泣き叫びながら、「どうして助けたの?私はどうしようもない人間なんだから、死なせてよ!」と怒りをぶつけた。

「死なせて!死なせてよ!」と彼女は壁に頭をぶつけようとしたが、輝明が素早く前に出て彼女を制止した。

結果、山田枝子は輝明にぶつかり、彼は数歩後退し、苦しそうに呻いた。

痛みをこらえ、胸を押さえながら深く息を吸い込んだ。もともと胃が痛かったところに、胸まで痛み出した。

ただ天台で風に当たるつもりだったが、偶然にも山田枝子が飛び降りようとする場面に出くわしてしまった。

山田枝子が綿に向かって最後に話した言葉が頭をよぎった。もし山田枝子が飛び降りてしまったら、警察はまず綿を調べることになるだろう。

本来、彼は関わるつもりはなかったが、綿が巻き込まれるのなら、黙っていられなかった。

「山田枝子、目を覚ませ!」綿は彼女を引き起こし、怒りを込めて問い詰めた。「死ぬことが怖くないなら、この世に何が怖いことがあるの?」

あの瞬間、彼女が飛び降りようとした姿は、あまりにも決然としていた。

「桜井先生、私はもう助からないの……」彼女は泣きながら言った。「あなたの言う通り、私は自分を裏切ってしまった」

「この世には、生きたいと願っても生きられない人がたくさんいるんだ。自分の命を粗末にするなんて、天国にいる亡霊たちも許さないよ!」綿は彼女を叱りつけるように言った。

周囲の人々も
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