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第0188話

綿は廊下に出て、監視カメラに向かって微笑み、「OK」のジェスチャーをした。

同時に、監視室では誰かがその映像を削除していた。

病院の入り口に戻り、綿は黒いビジネスカーのドアを開けた。

車内にはすでに若い男が待っていた。

「映像は消した?」と綿が聞いた。

「はい、ボス」と康史は頷いた。

桜井康史、20歳。M基地のエースハッカーで、驚異的な記憶力を持つチームの頭脳だ。作戦立案にも長けており、その実力は折り紙付き。

雅彦も車に乗り込み、車は静かに動き出した。

「これで陸川嬌もたっぷり怖い思いをしただろうな」と雅彦が笑った。

「かなり怖がったみたいだね」と康史も同意した。

綿はメイク落としを使って恐ろしいメイクを落としながら、冷静に言った。「彼女は私を憎んでいるからね」

「そりゃそうだろうな。どうしても高杉輝明と結婚したいのに、ボスがその座を譲らないから焦ってるんだよ」と雅彦はハンドルを軽く叩きながら溜息をついた。「彼女が上に行く一番簡単な方法は何だと思う?」

もちろん、それは綿を殺して、輝明を寡男にすることだ。

綿がいなくなれば、高杉家も彼女にこだわらなくなるから、嬌にとって、もう障害はなくなるわけだ。

「ボス、もし離婚しなかったら、陸川嬌は相当イライラするだろうね」と雅彦は意地悪そうに笑った。

綿は窓の外を見ながら、ウェットティッシュで顔を拭き、「自分の結婚を使って陸川に復讐するつもりはないわ。意味ないことよ」と静かに言った。離婚はするのだ。

「おや、ボス、成長したね」と雅彦は冗談を言いながら笑った。

綿は彼をちらっと見た。まるで自分が以前は幼稚だったかのような言い方だ。

……

朝、病院に到着すると、ナースステーションで看護師たちが噂話をしていた。

「聞いた?陸川嬌が昨夜、幽霊に遭遇したんだって!」

「幽霊に?」と須田先生が興味津々で話に加わった。

桑原看護士が答えた。「そうよ!昨夜、彼女は気絶して、医者に助けられたけど、その後ずっと熱が下がらなくて、今も訳のわからないことを言ってるんだって」

綿はサンドイッチを食べながらその話を聞き、歩みを止めた。

まだ熱があるなんて、やっぱり脆いわね。

後ろめたいことをしているから、そうなるのよ。

「ねえ、桜井先生」と桑原看護士が綿を呼び止めた。

「ん?」

「彼女が気絶してた時
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