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第180話

「海外の匿名口座だ」

少し間を置いて、月宮は続けた。「こんな事態になって、犯人が誰かなんて考えるまでもないだろう。お前を殺さないと終わらせるつもりはないだろ」

雅之はタブレットを脇に置き、「里香を監視させろ」と言った。

月宮は眉をひそめた。「こんなことが起きても、まだ彼女をかばうのか?」

雅之は冷ややかに彼を見つめ、「彼女がなぜこんな目に遭っているのか、分からないのか?」と言い放った。

月宮は唇を動かし、しばらく考え込んだ後、ため息をついた。「分かった。でも、彼女があなたに毒を盛った件はまだ解決していないし、彼女があの人の手先だと疑っている」

雅之は何も言わなかった。

本当なのか?

頭の中に、ここ一年の出来事が浮かび上がった。

もし里香が本当にそうなら、彼女には何度も手を出す機会があったはずだ。

しかし、彼女はそれをしなかった。

彼女の瞳はあまりにも澄んでいて、その笑顔はあまりにも純粋だった。雅之は信じたいが、過去の出来事を思い返すと、そう簡単には信じられなかった。

月宮は雅之の渋い顔を見つめ、しばらく考えた後に尋ねた。「本当に夏実と結婚するつもりなのか?」

「まだ離婚していない」

離婚しない限り、里香との関係は永遠に続く。

「でも、離婚は遅かれ早かれだ」

月宮の言葉に、雅之は何も言わず、目を閉じて休むことにした。

月宮も黙ったままだった。

レストランにて、祐介は料理をいくつか注文し、里香に「何が食べたい?」と聞いた。

里香は夏実の誘拐のことを考えていて、少し間を置いてから「もう食べたから、祐介兄ちゃんが食べて」と答えた。

その言葉が終わると、里香のお腹が二度鳴った。

思わず裏切られた気持ちでいっぱいになった。

祐介は遠慮なく笑い、メニューを里香に差し出した。「さあ、注文して。今日は君のおごりだ」

「…わかった」

里香は食べたい料理を注文し、ようやくメニューをウェイターに返した。

祐介は水のコップをいじりながら、里香の眉間に浮かぶ憂いをじっと見つめ、率直に聞いた。「今回のこと、すぐに解決するだろうに、なんでそんなに浮かない顔してるんだ?」

里香は苦笑しながら答えた。「問題は次から次へと終わらないから」

中毒の件は解決したけど、今度は誘拐の問題が出てきた。

今年は本当に運が悪いのかもしれないと真剣に疑い始めていた
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