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第186話

由紀子が美容院を後にしたあと、里香はベッドに横になったまま、技師のマッサージを受けているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。

再び目を覚ました時には、外はもう暗くなっていた。

里香は美容院を出て、スマホを取り出しタクシーを呼ぼうとした。来る時は気づかなかったが、この美容院が郊外にあることを思い出し、タクシーを捕まえるのが難しいと感じた。

しばらく道端で待っていると、ようやく一台のタクシーがゆっくりと近づいてきた。

「どちらまでですか?」

車に乗り込むと、運転手が尋ねた。

「カエデビルまでお願いします」

そう言いながら、里香はスマホを取り出し、メッセージを確認した。かおるから月宮に関する愚痴のメッセージが届いていた。

最後のメッセージを見て、里香は眉をひそめた。

かおる:【里香ちゃん、使ってないSNSアカウント持ってない?】

里香:【何するつもり?】

かおる:【あのクソ野郎が私をこんなに苦しめるんだから、ちょっと仕返ししないとね。もうアカウントは見つけたから、楽しみにしてて】

里香:【やりすぎないでね。怒らせたら結局困るのはあなたよ】

かおる:【大丈夫、分かってるから】

里香は「うん」とだけ返事し、それ以上は何も言わなかった。

食事に毒を入れた証拠を雅之に送ったが、彼からの返信はまだなかった。長いまつげがわずかに震え、里香は彼とのチャット画面を閉じた。

その時、車内にふわりと香りが漂ってきた。里香は香水が苦手で普段からほとんど使わないため、香りには敏感だった。

里香は眉をひそめ、前方を見ると、運転手が帽子とマスクで顔を隠していることに気づいた。不安が心に広がり、スマホを握る手に力が入った。平静を装いながらも、スマホを見続けた。

里香は電話をかけようとしたが、緊張のあまり番号を確認することもせずに押してしまった。通話がつながると、相手が雅之の番号だと気づいた。

そうだ、彼の番号は連絡帳の最上部にあったんだ。以前、病院で警備員に止められた時に電話をかけたが、雅之は出ずに電源を切ったのだった。

里香は唇を噛んだ。電話を切りたかったが、不安が彼女の指を震わせ、わずかに期待が芽生えた。

「プー…プー…プー…」

三回の呼び出し音の後、電話がつながった。

「もしもし?」

里香が話し始める前に、電話の向こうから夏実の冷たい声が聞こえて
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