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第189話

斉藤の目が冷たく光り、突然ナイフを振り上げて里香の顔に突き刺そうとした。

外は真っ暗で、月明かりがかすかに差し込んでいた。その瞬間、ナイフが持ち上がり、光が一瞬反射した。

里香の心臓がギュッと縮まり、「死ぬ前に理由を教えてよ!」と叫んだ。

斉藤は動きを止め、冷たい笑みを浮かべながらマスクと帽子を外した。彼は里香の髪を掴み、「俺の顔をよく見ろ。本当に俺のことを忘れたのか?」と迫った。

里香は無理やり頭を持ち上げ、斉藤の顔をじっと見つめた。

斉藤の顔立ちは鋭く、若い頃はきっとイケメンだったに違いないが、今の彼は、凶悪な表情で目には殺意が宿っていた。

里香はその表情にゾッとしたが、どうしても彼のことを思い出せなかった。

里香の目に浮かぶ迷いを見て、斉藤は怒りを込めて再び彼女の頬を殴った。

「お前のせいで俺はこんな目に遭ったんだ。あの時、お前がいなければ、今頃は海外で悠々自適に過ごしていたはずだ!」

斉藤はもうこれ以上話す気もなく、再びナイフを振り上げ、里香の顔に突き刺そうとした。

「ドン!」

その時、廃工場の扉が突然開き、まぶしい車のライトが中を照らし、スポーツカーが猛スピードで彼らの前に現れた。

斉藤は一瞬驚き、こんなに早く誰かが来るとは思わず、慌てて里香を放し、その場を逃げようとした。

車のドアが開き、一人の影がすぐに追いかけたが、斉藤はこの場所に詳しいようで、夜の暗闇に紛れて木立の中に消えてしまった。

里香は辛うじて起き上がり、誰かが彼女の腕を掴むのを感じて驚いた。

「俺だ」

祐介の声だった。

里香は彼を見上げ、頬が腫れたまま、痛々しい姿で「祐介兄ちゃん、また助けてくれたのね…」と呟いた。

「ごめん、犯人を逃がしちゃった。でもあいつは誰なんだ?なんでお前を狙ったんだ?」

里香は首を振った。「私も分からない」

どうしてこんな不幸ばかりが自分に降りかかるのか、まるで理由が分からなかった。

「とりあえず車に乗ろう。病院に連れて行く」

里香は痛みで顔をしかめたが、祐介の提案に逆らわず、彼に支えられて車に乗り込んだ。

スポーツカーが倉庫を出て、Uターンして離れようとしたその時、遠くから猛スピードで走ってきた車が彼らの前に急停車した。

車のライトが明るく照らし出し、まるで昼間のように辺りを照らしている。

ドアが開き、数十人のボデ
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