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第195話

「うっ!」

里香は力いっぱい雅之を押し返そうとしたが、彼の力は圧倒的で、まるで飲み込まれるような感覚に陥った。雅之の清涼な香りが、里香を包み込み、深くまで侵入してきた。

しばらくして、里香は息ができなくなり、ようやく雅之は彼女を解放した。鼻先が触れ合うほどの距離で、荒くなった里香の息遣いと赤く染まった目尻を見つめながら、雅之の喉がごくりと鳴った。その後、雅之は車から降りた。

里香はキスの後、全身から力が抜けてしまい、指一本動かすことすらできなかった。

彼女の目には、激しい感情と憎しみが宿っていた。このクソ野郎!

でも、雅之が車から降ろさなかったので、里香もそのまま車に留まることにした。

夏実に謝るなんて、絶対に無理だ!

ただ、運が悪いことに、二人のキスを山崎が目撃してしまった。最初は怒りに燃え、その後、スマートフォンを取り出して写真を撮り、怒り心頭で夏実の病室に向かった。

夏実は山崎の様子を見て、すぐに「どうしたの?」と尋ねた。

「本当に腹が立つ。あのクソ女、昼間っから雅之を誘惑してるんだ!」

山崎はそう言いながら、スマートフォンを夏実に渡し、写真を見せた。

夏実は写真の中の二人を見て、顔色が一瞬で青ざめた。

夏実は雅之と結婚寸前だったが、彼がこんな風にキスしてくれたことは一度もなかった。

里香を抱きしめ、まるで骨の髄まで抱き締めるような雅之の狂おしい姿が、夏実の胸に深く刺さった。

夏実は爪を強く立て、鋭い痛みが彼女の冷静さを保つ手助けをした。

山崎は夏実の顔色を見て、そばで言った。「夏実ちゃん、雅之を早く里香と離婚させる方法を考えないと、その女がまた何か仕掛けるかもしれないよ。男はそういうのに弱いんだから!」

夏実はスマートフォンを山崎に返し、「真央、一つお願いがある」と言った。

誘拐の件が露見しても、雅之が里香を嫌っていないなんて思わなかった。

夏実は死に物狂いで雅之を追い詰めたのに、彼があんな風に里香にキスするなんて…。

本当に許せない!

雅之は私のもの。絶対にあのクソ女に奪われてたまるもんか!

山崎は夏実の言葉を聞いて目を輝かせ、「わかった、任せて!」と頷いた。

その時、病室のドアが開き、雅之が入ってきた。

夏実は雅之を見て、すぐに柔らかい表情に戻して微笑んだ。「雅之、来てくれたのね」

雅之は「具合が悪いって聞
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