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第13話

加奈は友梨に向かって、「この数日、実験室で何か得たものはある?」と尋ねた。

「私が観察したところ、現在、研究室では心血管疾患の治療薬の開発を行っています。薬の開発進度は約50%で、今はちょうどラットを使った実験の準備段階です」と友梨は答えた。

谷井の顔色は少し良くなり、友梨を見る目にも称賛の色が浮かんだ。

「いいね。設備の使い方は、どれくらい学んだ?」

「だいたいできるようになりました」

隣にいた加奈が眉をひそめて友梨を見つめた。「友梨、早く自分で実験をしたい気持ちは分かるけど、実験はとても慎重に取り組むべきものだよ。最近使ったことがない設備もたくさんあるし、どうしてそんなに簡単に言えるの?」

友梨は淡々とした表情で、「大学の時にこれらの設備は全部使ったことがある」と言った。

「あなたも大学だと言ったね。何年も実験室に入っていないのだから、すべて一から学び直さなければなりません。私たちは薬の研究開発をしているので、少しの油断も許されません」

「どうして私が最初から学んでいないとわかるの?」

加奈は唇を噛みしめ、失望した顔で彼女を見つめた。「この数日間ずっと実験室で雑用をしていたのに、どうやって勉強する時間があるの?谷井さんの前でいいところを見せたいからって、嘘をつくのはやめなよ」

友梨は笑って、「あなたも知っているんですね。この数日間、私に雑用をたくさん任せたので、設備の使い方を学ぶ時間がなかったんですよ?」と言った。

加奈の表情が固まり、爪が無意識に手のひらに食い込んだ。

彼女は友梨を甘く見ていたのだ!

「友梨……あなたは私がわざとあなたに、設備の使い方を教えないと疑っているの?」

「そんなことありませんよ。神田さん、この数日間のご配慮にはとても感謝しています」

加奈が何か言おうとしたが、隣にいた谷井がそれを遮った。

「よし、君がほとんど学んだと言うなら、ちょうど今日の実験は抽出の段階に来ているから、このステップを君がやってみて」

友梨はうなずき、設備の前に歩いて操作を始めた。

最初、加奈は友梨のミスを待って、谷井に嫌われるチャンスを狙っていた。しかし、友梨のすべての行動は正確で完璧だった。

谷井の褒める声が耳元で響くまで、加奈は我に返らず、心の中に久しぶりの焦りが湧き上がった。

以前、木村家の会社が破産する前は、彼女が友梨
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