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第19話

「この人を病院に連れて行って」

健の表情は冷淡で、真知子を見る目には少しの温かみもなかった。

彼のそんな視線を浴びて、真知子の心は絶望と悲しみに満ち、頬を涙が伝った。

「湯川さん、私は本当にあなたを愛しています。友梨さんは私を受け入れてくれないのですか?私のお腹の中の子供も受け入れてくれないのですか?」

健は彼女を嫌悪の表情で見つめる、「お前はただの愛人だ。彼女と比べる資格なんてない」

真知子はとても辛く思い、嗚咽しながら言った。「私と一緒にいたこの時間、あなたは私を愛したことがありますか?たとえほんの少しでも?」

健は嘲笑の表情を浮かべ、「キャバ嬢に心を動かされた人を見たことがあるか?」と言った。

彼が真知子と関係を持ったのは、彼女が積極的に誘惑し、ベッドの上で大胆だからに過ぎない。

この男は愛と性を常にきっちりと分けている。

真知子の頬の血色が急速に失せ、全身がよろめいた。

彼女は思いもしなかった、健が彼女をただの捨てられる玩具としか見ていなかったことを。

彼女は諦めきれなかった。やっとの思いで子供を授かったのに、健にゴミのように捨てられるなんて、どうしても納得できなかった。

「奥さん、お願いです、私の子供を助けてください……この子を失いたくないんです……彼もあなたの孫なんですよ……」

直美を訪ねたとき、真知子はお腹の中の子供の性別の鑑定報告書を持っていた。

彼女が男の子を妊娠していると知って、直美は初めて彼女に少し優しくした。

それを聞くと、直美はすぐに彼女のそばに駆け寄り、手を握りしめてから、健を冷たく睨みつけ、「もし今日彼女を連れ去るなら、私はここで死んでやる!」と言い放った。

彼女はもともと友梨を見下していた。家が没落した女性なんて、直美の息子にはふさわしくない。彼女は真知子を利用して、健と友梨を離婚させようとしている。

真知子が湯川家に入ることは当然不可能で、直美が望んでいるのは母を排除し、子供だけを残すことだ。

健は眉をひそめ、冷たい声で母親に言った。「母さん、祖父が定めた家訓を忘れたんですか?もし真知子にこの子を産ませたら、湯川家とは僕にはもう何の関係もなくなります」

直美の顔色が変わり、すぐに歯を食いしばって言った。「この件については心配しないで。私は絶対に実家の方には知られないようにするわ」

「叔父さんは
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